OBSERVATION観測
◇上旬の強い寒気と春の雪
2月に引き続き、数日の周期で低気圧や気圧の谷が日本付近を通過しました。2月に比べると低気圧が日本海側を通ることが多くなり、低気圧の前面では暖気が入って気温が上がり、低気圧の通過後には寒気が入って気温が下がることが多く、気温の変化が大きくなりました。このため、月平均気温は6.6℃とほぼ平年並になりました。ただ、月の初めは下層に強い寒気が入って気温が低くなり、4から5日にかけては南岸低気圧の影響で雪が降りました。低気圧が頻繁に通過しましたが、関東地方では日本海側を通る低気圧の場合には降水量が多くならないことが多く、月降水量は91.0mm(平年比88%)とほぼ平年並でした。また、日照時間も190.2時間(平年比105%)とほぼ平年並でした。
3月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 6.6 6.8 月降水量(mm) 91.0 103.6 月日照時間(時間) 190.2 181.3
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 3.9 5.7 中旬 7.2 6.7 下旬 8.4 8.0
●3月の日立市役所における日平均気温とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移
◇南岸低気圧による雪(4日〜5日)
4日から5日の朝にかけて、本州の南を低気圧が発達しながら東北東へ進みました。低気圧の東進に伴い、関東地方では北東の風とともに地表付近に冷たい空気が入り、4日の未明から夕方にかけて雪が降りました。日立市役所では、4日の12時には最深積雪8cmを記録しました。3月に積雪が5cmを超えたのは、1987年3月8日の7cm以来のことです。また、3月の積雪量としては、1986年3月23日の11cmに次いで多くなりました。
●4日〜5日の関東地方の積雪(cm) 観測地点 最深積雪 観測地点 最深積雪 日立 8 宇都宮 14 大子 9 前橋 5 水戸 10 熊谷 6 鉾田 2 東京 2 土浦 4 千葉 4 下妻 9 横浜 2
●3月の日立の最深積雪(cm) 順位 年 月日 最深積雪 降雪時間 1 1986 3月23日 11 22日22時〜23日20時 2 2005 3月04日 8 04日00時〜04日16時 3 1987 3月08日 7 07日15時〜08日03時 4 1957 3月05日 6 05日09時〜05日16時 5 1984 3月19日 4 19日16時〜20日08時 6 1985 3月11日 4 11日04時〜11日22時
3日の明け方、沖縄の南で発生した低気圧は発達しながら東北東へ進み、4日の朝には八丈島の南を通って、夕方には関東地方の東へ進みました。下層が寒気でおおわれていたたことと、低気圧が関東地方の南を離れて通り暖気が入ってこなかったことから、関東地方の全域で雪が降りました。
日立市役所における4日の気温の変化を見ると、0時には3℃近くあった気温が2時ころから急に下がり始め、6時から10時にかけて0℃近い気温が続きました。その後、気温はやや上がりましたが、翌日の朝まで2℃前後の気温が続きました。また、低気圧が近づいた明け方から夕方にかけて、瞬間風速で10m/sを超える北東の風が吹きました。一方、低気圧が近づくにつれて気圧もほぼ一定の割合で下がり続け、14時前にはこの日の最低気圧1011.4hPaを記録しました。その後、徐々に気圧は上がり始めましたが、上層の気圧の谷が西にあり、本州南岸に低圧部が残ったため夜には気圧の上昇が見られなくなりました。
今回の低気圧は、関東地方の南海上を離れて進みました。一方、中国大陸の東北部から黄海にかけて上層に強い寒気(高さ5500m付近の気温が-40℃以下)を伴った深い気圧の谷があり、ゆっくりと南東へ進んでいました。このため、朝鮮半島北部から北陸地方にかけて帯状対流雲が発生し、その東端が関東地方から東北地方南部にもかかり、広い範囲で雪が降りました。
気象衛星の雲画像を見ると、すでに3日の朝には朝鮮半島の付け根から南南東へ伸びる帯状対流雲が発生しています。その後、帯状対流雲の走向は、しだいに西から東方向へ変化していくとともに、東端が北陸地方から関東地方、東北地方南部へかかるようになっていきました。4日09時の気象衛星画像では、この帯状対流雲の南縁に雲渦(下層渦)が発生し、対流雲が全体として前日よりも発達していることを示しています。
この後、雲渦は発達して小低気圧になり、東進して北陸地方に上陸しました。上陸後、低気圧は衰弱して消滅しましたが、この低気圧に伴う雪雲がかかり、日立市でも4日の24時前から5日の8時過ぎにかけて、再び弱い雪が降りました(5日0時から9時までの降水量は1.0mm)。
●3月4日の気温と海面気圧及び風速の変化
●参考:3月3日から4日の地上天気図
●参考:3月4日09時の500hPaと850hPa面高層天気図
※高層天気図において、実線は等高度線を、点線は等温線を表しています。また、観測地点における上段の数値は、その地点の500hPaまたは850hPaの高さにおける気温を、下段の数値は、同じ高さにおける気温と露点温度の差を表しています。また、850hPa高層天気図における網掛けの部分は、気温と露点温度の差が3℃以下(空気が湿っていることを表す)の領域を表しています。
●参考:気象衛星可視画像(03日12時と04日12時)
●参考:気象衛星赤外画像(03日09時から05日03時)
作成日:2004/04/20
訂補日:2014/12/04
名前 日立市天気相談所