OBSERVATION観測
◇晴れて雨の少なかった4月
中旬前半に本州南岸に前線が停滞して曇りや雨の日が続きましたが、それ以外は移動性高気圧におおわれて晴れる日が多くなりました。中旬から下旬の前半にかけては寒気が入り、気温は平年より低くなりました。反対に、上旬と月の終わりは日本海を進む低気圧に向かって南から暖かい空気が入り、気温が高くなりました。この結果、月平均気温は12.4℃とほぼ平年並になりました。一方、晴れる日が多かったことと低気圧が日本海を進むことが多かったことから、月降水量は57.0mmと平年の42%しかありませんでし。反対に、日照時間も216.4時間と平年の124%になり、晴れて雨の少ない月になりました。
4月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 12.4 12.0 月降水量(mm) 57.0 137.1 月日照時間(時間) 216.4 175.0
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 12.0 10.2 中旬 10.6 11.9 下旬 14.6 13.8
旬日照時間(時間) 旬 観測値 平年値 上旬 76.7 57.7 中旬 55.4 56.6 下旬 84.3 60.6
●4月の日立市役所における日平均気温と日最高気温の推移
月平均気温は平年並みでしたが、月初めと中旬から下旬前半にかけては低気圧の通過後に上層に寒気が入り、気温の低くなる日がありました。また、上旬後半と月の終わりには南から高気圧におおわれて下層へ暖かい南風が入り、気温の上がる日がありました。特に、28日から29日にかけては、暖かい空気が入るとともに、南西から西南西の風が吹いてフェーン現象が起こり、気温が上がりました。29日の日最高気温は30.3℃を記録し、4月の最高気温としてはこれまでで最も高くなりました。
●4月の最高気温と真夏日初日の記録
4月最高気温(℃) 順位 年 日 最高気温 1 2005 29 30.3 2 1998 21 29.1 3 2005 28 28.4 4 2004 17 28.1 5 2003 19 27.6
真夏日初日 順位 年 月日 最高気温 1 2005 04/29 30.3 2 1988 05/20 30.2 3 2004 05/31 31.6 4 1987 06/06 30.0 5 1991 06/12 30.8 ※順位は数値の大きい方または月日の早い方からで、1953年から2005年の統計
28日から29日にかけて、低気圧が沿海州から北海道の北を東へ進みました。この低気圧の南を回る形で、本州付近の下層には中国大陸から暖かい空気が入ってきました。高さ1500m付近(850hPa面)の気温の変化を見ると、27日には福岡で気温が10℃を超え、西日本へ暖かい空気が入り始めていることが分かります。そして、28日21時には仙台で14.2℃、つくばで17.8℃と、東日本まで暖かい空気の塊が進んでいます。29日の9時には、仙台では9.2℃まで気温が下がっていますが、つくばの気温は16.2℃と、まだ暖かい空気が残っていることが分かります。この暖かい空気と、南西の風によるフェーン現象が起きたことにより、29日の関東地方では気温が上がりました。
●850hPa面の気温(℃)の変化 観測地点 26日09時 26日21時 27日09時 27日21時 28日09時 28日21時 29日09時 29日21時 30日09時 仙台 5.0 2.4 2.2 9.2 9.4 14.2 9.3 4.5 4.6 つくば 8.6 4.3 5.7 11.3 15.7 17.8 16.2 14.5 9.0 福岡 5.6 9.3 11.5 14.4 15.4 15.4 11.1 14.1 15.3
日立市役所における気温の変化を見ると、28日の夜から29日の朝にかけては、南西の風の影響で気温がほとんど下がらなかったことが分かります。28日は日の出とともに気温が上がり始め、9時頃からは南西の風が強まり、さらに気温が上がりました。13時28分に、この日の最高気温28.4℃を記録した後、徐々に気温は下がっていきました。日没とともに気温は20℃近くまで下がりましたが、夜通し南西の風が吹き続けたため、それ以上気温は下がりませんでした。29日朝の最低気温は19.0℃で、平年の最低気温と比較すると、7月上旬の気温に相当します。
29日は、日の出とともに再び気温が上がり始め、11時35分にはこの日の最高気温30.3℃を記録しました。その後、風向が南から北東に変わるとともに、気温が急に下がりました。16時頃、一時的に気温が上がるときがありましたが、その後は日没とともに気温は低くなっていき、24時には14.7℃まで下がりました。そして、30日朝の最低気温は11.7℃と、平年の最低気温(10.2℃)近くまで下がりました。
南部支所(日立市石名坂町)及び県内のアメダス観測地点と気温の変化を比較すると、28日の夜から29日の朝にかけて、日立市役所は他の観測地点と比べて、あまり気温が下がらなかったことが分かります。特に、同じ日立市内でも西側に山のない南部支所と比べると4℃近く気温が高く、日立市役所では風向の気温への影響が大きいと考えられます。
29日の7時頃から気温が上がり始めていますが、南西の風が強まったこともあって、ここでも日立市役所の気温の上がり方は、他の地点に比べて速くなっています。12時前に風向が西南西から南へ変わるとともに気温の上昇は止み、風向が北東へ変わった13時頃から気温が下がりだしました。アメダスの14時における気温の分布を見ると、日立の気温が21.1℃まで下がっているのに対して、水戸の気温はまだ29.3℃と高く、風向も南になっています。前線の形が、今回のように東西に寝ている場合には、地形の影響を受けて、日立市を含む茨城県の北部だけ早めに北東の風に変わり、気温が下がることがよくあります。
●4月28日から29日の気温と気圧及び風向、風速の推移
●4月28日から29日の気温の推移(1時間値)
●4月29日11時と14時のアメダスによる気温と風向の分布
●参考:4月28日21時と29日09時の地上天気図
●参考:4月28日21時と29日09時の850hPa高層天気図
※高層天気図において、実線は等高度線を、点線は等温線を表しています。また、観測地点における上段の数値は、その地点の500hPaまたは850hPaの高さにおける気温を、下段の数値は、同じ高さにおける気温と露点温度の差を表しています。また、850hPa高層天気図における網掛けの部分は、気温と露点温度の差が3℃以下(空気が湿っていることを表す)の領域を表しています。
作成日:2004/05/12
訂補日:2014/05/08
名前 日立市天気相談所