OBSERVATION観測
◇寒くて乾燥した師走
9月から平年より気温の高い状態が続いていましたが、11月中旬からは上層の大気の流れが変わり、北極からの寒気が日本付近へ南下してくるようになりました。12月に入っても同じ状態が続きましたが、特に中旬からは日本付近で低気圧が急速に発達することが多く、冬型の気圧配置が強まって、非常に強い寒気が南下するようになりました。このため、2日に平年の気温を上回った以外は、平年よりも気温の低い日が続きました。月平均気温は4.7℃と平年より2.5℃低くなり、これまでで最も気温の低かった1974年の5.2℃を下回り、1953年に天気相談所が観測を開始して以来の最低記録を更新しました。全国的に見ても寒気は東・西日本を中心に入り、月平均気温平年偏差は東日本で-2.7℃、西日本で-2.8℃で、1946年の地域平均の統計開始以来の低い記録となっています。
また、冬型の気圧配置が続いて晴れる日が多かったため、日照時間は212.6時間と平年の112%になりました。一方、降水量は18.0mmと平年の58%しかなく、乾燥した日が続きました。12月の降水量としては、観測開始以来少ない方から数えて13番目と、それほど降水量が少ないわけではありませんでしたが、西から西北西の季節風が吹くときが多く、フェーン現象が起きて湿度が低くなりました。月平均湿度は51%とと、1973年、1969年、1956年の50%に次いで低い値でした。また、日最小湿度が40%未満になった日数も27日と1995年に次いで多く、例年以上に寒くて乾燥した12月でした。
12月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 4.7 7.2 月降水量(mm) 18.0 31.3 月日照時間(時間) 212.6 189.9
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 6.9 8.5 中旬 3.8 7.1 下旬 3.4 6.1
●12月の日立市役所における日平均気温とつくばにおける500hPa気温の推移
●12月の日立市役所における日最低気温と日平均湿度の推移
●12月の気温(℃)と湿度(%)の記録
月平均気温 順位 年 気温 1 2005 4.7 2 1974 5.2 3 1983 5.4 4 1975 5.7 5 1973 5.7 平年値 7.2
冬日の日数 順位 年 日数 1 2005 16 2 1985 15 2 1956 15 4 1983 13 5 1988 10 平年値 5.8
月平均湿度 順位 年 湿度 1 1973 50 2 1969 50 3 1956 50 4 2005 51 5 1983 52 平年値 57.5
最小湿度40%未満日数 順位 年 日数 1 1995 28 2 2005 27 3 1956 26 4 2001 24 平年値 18.2 ※順位は値の低い方または多い方からで、1953年から2005年までの観測値による。
●12月の日立市役所における月平均気温と月最低気温の推移(1953年〜2005年)
中旬まで暖かい日の続いた2004年の12月と今年の12月の上層の大気の流れを比べてみると、下図の500hPa高度・偏差図のようになっています。2004年の12月は、日本付近では東西に広く正偏差(平年に比べて気圧が高い)となっていて、寒気の南下しにくい形になっています。それに対して、2005年の12月は日本付近から北太平洋北部にかけて大きな低圧部となっているとともに、東西に広く負偏差の領域が広がり、日本付近に強い寒気の南下しやすい気圧配置でした。
●2005年と2004年12月の上層大気の流れの比較
2005年12月の500hPa高度、偏差 | 2004年12月の500hPa高度、偏差 |
※高度、偏差図において、実線は等高度線を、点線は偏差(平年の高度との差)を表しています。また、網掛けの部分は負偏差(平年より高度が低い)の領域を表しています。
◇上層の寒気が通過した後の強風(18日と19日)
17日から19日にかけて、上層5000mの気温が-45℃以下という非常に強い寒気が、シベリアから日本海へ南下してきた後、東北地方を通過して東海上へ抜けました。この寒気の影響で、日立市でも17日の午後から気温が低くなり、18日の朝と19日の昼前にはにわか雪がちらつきました。また、上層を寒気が通過した後に一時的に強い西風が吹きました。
17日は、低気圧が日本海を東北東へ進み、関東地方では南西の風が吹いて気温が上がりました。20時頃から寒気が入り始めてくるとともに気温が下がりだし、風向も西へ変わりました。上層の寒気は、18日には本州の南まで下がったため、日中晴れの天気が続いたにもかかわらず、18日の最高気温は5.4℃までしか上がらず、前日の最高気温11.2℃から6℃近くも低くなりました。また、強い寒気の影響で18日の6時前には、にわか雪がちらつきました。この雪雲が抜けた後、西よりの季節風が強まり、18日の10時過ぎには日立市役所で最大瞬間風速22.1m/sの西の風を記録しました。
強い風は、18日の夕方には収まりました。しかし、19日になると再び上層へ寒気が流れ込んできて、9時から11時頃にかけてにわか雪がちらつきました。この雪雲が抜けた後、上層の気圧の谷が通過して一時的に西の風が強まり、14時前には日立市役所で最大瞬間風速23.0m/sの西の風を記録しました。この強い風は、15時過ぎには弱まりました。
月日 | 地点 | 最大風速(m/s) | 最大瞬間風速(m/s) | ||||
風速 | 同風向 | 同時刻 | 風速 | 同風向 | 同時刻 | ||
18日 | 日立市役所 | 11.3 | 西北西 | 10:25 | 22.1 | 西 | 10:16 |
南部支所 | 10.9 | 西北西 | 10:39 | 18.6 | 北西 | 10:43 | |
水戸(金町) | 10.1 | 北西 | 10:30 | 18.3 | 北西 | 10:21 | |
19日 | 日立市役所 | 11.5 | 西 | 13:58 | 23.0 | 西 | 13:46 |
南部支所 | 12.7 | 西北西 | 14:10 | 22.0 | 西北西 | 14:12 | |
水戸(金町) | 6.8 | 北西 | 14:50 | 15.0 | 西北西 | 14:47 |
●12月17日から19日にかけての風向風速と気圧及び気温の変化
●参考:12月17日から19日の09時の地上天気図と500hPa面高層天気
気象衛星で雲の変化を見ると、寒気の南下する様子がよくわかります。16日の日本付近は弱い冬型の気圧配置で、東シナ海から日本の南海上にかけて寒気に伴う筋状雲が見られますが、陸地からの距離が離れて南海上では塊状に変化しており、寒気が弱いことを示しています。また、日本海には低気圧の発生に対応する雲の塊ができ始めています。
17日の夜になると、東シナ海には寒気の流入に伴う筋状雲がびっしりと広がり、強い寒気が南下していることが分かります。さらに、18日の朝には本州の南海上の雲も筋状雲に変わり、寒気が南下していることを表しています。また、東北地方から関東地方の東には、朝にわか雪を降らせた雲が白く輝いています。
19日の朝には、東シナ海の筋状雲は消えてきており、西の方では寒気の流入が弱くなっていることが分かります。しかし、東日本から北日本にかけては西から東へ筋状の雲がかかり、一部は太平洋側にまで流れ出していて寒気が強まっていることを示しています。強い寒気は、19日の夜には東海上へ抜け、筋状雲の流れも北西から南東へ変わり、太平洋側へ流れ出していた雲も消えました。
●参考:気象衛星赤外画像(16日21時から19日21時)
〜12月19日21時 |
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作成日:2006/01/17
訂補日:2014/03/20
訂補日:2015/10/21
名前 日立市天気相談所