OBSERVATION観測
◇肌寒い4月
上旬は、短い周期で低気圧が本州付近を通過しました。低気圧の通過後は、一時的に冬型の気圧配置となり、寒気が入りました。中旬から下旬の前半にかけても、動きの遅い寒冷低気圧が相次いで本州付近を通過しました。このため、曇りや雨の日が多くなって気温が上がらず、月平均気温は11.3℃と平年より0.7℃低くなりました。また、日照時間も158.1時間と平年の90%にしかなりませんでした。一方、降水量は本州付近での低気圧の発達が弱かったことから、天気の悪い日が多かったにもかかわらず、82.0mmと平年の60%しかありませんでした。
4月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 11.3 12.0 月降水量(mm) 82.0 137.1 月日照時間(時間) 158.1 175.0
4月の最高気温 順位 年 最高気温(℃) 1 1960 20.3 2 2006 20.5 3 1970 21.0 4 1954 21.0 5 1982 21.1 ※施行気温の順位は値の小さい方から(1953年〜2006年の統計)。
例年、4月になると日本海を進む低気圧に向かって南よりの風が吹くようになります。ときには低気圧が発達して強い南西の風が吹き、フェーン現象が起きて日最高気温が25℃を超えることもあります。しかし、今年の4月は日本海で低気圧が発達することがなく、強い南風が吹いて気温の上がる日はありませんでした。このため、月最高気温は20.5℃と、1960年の20.3℃に次いで、観測開始以来番目に低い記録となりました。
4月の風向頻度を平年と比べてみると、平年は南南西から南西の風が全体の15%近くあるのに対して今年は10%しかありませんでした。その一方、北から北北東の風は、平年の17%に対して今年は25%を超えており、北東の風とともに冷たい空気が入り、肌寒くて下層の雲が広がる日が多かったことを表しています。
●4月の日立市役所における日平均気温とつくばにおける500hPa気温の推移
●4月の日立市役所における風向頻度分布と日照時間の推移
また、今年は偏西風の蛇行が大きく、中旬以降は偏西風帯から切り離された上層の低気圧がしばしば日本付近を通過しました。この低気圧は、上層に寒気を伴うため寒冷低気圧または寒冷渦とも呼ばれます。低気圧の進行方向前面(東側)では特に大気の状態が不安定となり、局地的に雷や突風、強い雨などの激しい気象現象を起こすことがあります。また、偏西風帯から切り離された結果として低気圧の動きが遅く、曇りや雨の天気が長引くという特徴があります。
18日にモンゴル付近にあった上層の気圧の谷は南東へ進みながらしだいに偏西風帯から切離し、19日には寒冷低気圧となってボッカイ湾付近まで進みました。19日09時の地上天気図を見ると、朝鮮半島とボッカイ湾の北に二つの弱い低気圧があります。しかし、高度5500m付近(500hPa面)の高層天気図を見ると、ボッカイ湾付近に円形に近い閉じた等高度線で表される低気圧がひとつだけあり、中心付近には-30℃以下の強い寒気を持っていることが分かります。また、寒冷低気圧の東側、朝鮮半島には発達した雨雲がかかっています。
20日になっても寒冷低気圧の中心は日本海西部にありましたが、東側の寒気の先端部は寒冷前線となって先行し、本州付近を東へ進んでいきました。これに伴い、西日本から北日本にかけての広い範囲で強風が吹くなど大荒れとなりました。気象庁の観測によると、島根県浜田市では06時43分に最大瞬間風速33.8m/s、東京都大手町でも11時39分に26.0m/sの南の風を記録しています。日立市では地形の影響で寒冷前線に向かって吹き込む南風が強まることはありませんでしたしかし、寒冷前線が通過する直前の12時02分には最大瞬間風速16.2m/sの南東の風を観測しています。また、茨城県の北部では、一時的に1時間に20mmを超える強い雨が降りました。
この寒冷低気圧は、その後ゆっくりと東南東へ進み、21日の昼頃には関東地方を通過して夕方には日本の東へ抜けました。寒気の中心が通過した昼過ぎには、規模の小さいものでしたが、栃木県から茨城県、千葉県にかけて雷が発生し、にわか雨が降りました。寒気が東へ抜けた後、天気は急速に回復して22日にかけ晴れの天気が続きました。
●参考:4月19日と21日の地上天気図と高層天気図及び気象衛星水蒸気画像
2006年4月19日09時の地上天気図 | 2006年4月21日09時の地上天気図 |
2006年4月19日09時の500hPa高層天気図 | 2006年4月21日09時の500hPa高層天気図 |
2006年4月19日09時の気象衛星水蒸気画像 | 2006年4月21日09時の気象衛星水蒸気画像 |
水蒸気画像は、上層から中層に存在する水蒸気の量を目で見える形で表現することができます。このため、上層の大気の流れを可視化して、上層の渦の存在を推定することができます。下の写真では、矢印の先端部分が、上層の渦(寒冷低気圧)の中心にあたります。
19日21時、20日09時、21時の画像で、寒冷低気圧の東側から南東側へ南北に伸びる白い部分が、寒気と暖気の境界を示しています。この部分は、寒冷低気圧よりも速い速度で東へ進むとともに、しだいに寒冷低気圧の北側から北西側へ回り込んでいき、南からの暖気が北へ運ばれたことを表しています。
●参考:4月18日から22日までの日本付近の大気の流れの変化(気象衛星水蒸気画像)
作成日:2006/05/11
訂補日:2013/07/31
名前 日立市天気相談所