OBSERVATION観測
◇中旬に入り、急速に暖かくなる
4日から6日の周期で低気圧が日本付近を通過しましたが、低気圧の通過後も冬型の気圧配置になることはほとんどなく、移動性高気圧におおわれて晴れる日が多くありました。日本付近を通過する時点での低気圧の発達は弱く、関東地方では強い雨の降ることはありませんでした。このため、月降水量は65.0mmと平年の63%しかなく、2月に引き続いて雨の少ない月になりました。一方、日照時間は192.7時間と平年の106%になりました。
気温の変化を見ると、上旬は日本海を寒冷渦がゆっくりと東進し、上層から下層にかけて寒気におおわれて気温があまりあがりませんでした。しかし、8日の朝に寒冷渦が日本の東へ抜けた後、気圧の場が変わり南から暖かい空気が入ってくるようになりました。特に、中旬は下層から上層にかけて全体に暖気が入り、一段と気温が上がりました。このため、中旬の平均気温は9.8℃と平年よりも4.3℃高くなりました。また、月平均気温も8.1℃と平年より1.3℃高くなりました。
3月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 8.1 6.8 月降水量(mm) 65.0 103.5 月日照時間(時間) 192.7 181.3
気温の旬変化(℃) 旬 平均気温 旬平年値 上旬 6.2 4.1 中旬 9.8 4.5 下旬 8.3 4.9
月初めから7日にかけては、寒冷渦が北日本付にあって日本付近では上層から下層にかけて寒気が入りやすい状態が続きました。つくばにおける高層観測の気温を見ると、1日から8日にかけて500hPaの気温は-30℃前後と平年より5℃近く低く、850hPaの気温も低気圧が通過した日を除いて-5℃前後の日が続きました。8日に寒冷渦が日本の東へ抜けた後、上層の高気圧が強まって南からの暖かい空気におおわれるようになり、地上でも移動性高気圧が日本付近を広くおおう日が続くようになりました。このため、500hPaの気温は-20.℃を上回るようになり、月初めに比べて10℃以上も上昇しました。また、850hPaの気温も0℃を上回る日が続きました。
特に、月の半ばには日本付近を東進した大きな移動性高気圧の後面に沿って南から暖かい空気が入り込んだため、日平均気温が10℃を超えて4月中旬並みの陽気が続きました。この陽気の影響で、1月の中旬から2月にかけて平年より気温が低かったにもかかわらず、平和通りの桜は過去10年間の平均日3月31日より3日早い、昨年と同じ3月28日に開花しました。
また、上旬の終わりから暖かい日が続くようになったため、日最低気温が0℃未満(冬日)になった最後の日は、3月31日現在で3月6日となっています。これは、日立市役所で観測を開始して以来1995年と並んで最も早い記録となっています。4月に入っても気温の高い日が多いと予想されていることから、この記録は変わらないと思われます。今年の冬は、12月から1月上旬にかけては寒気の南下が弱く、暖かい日が続きました。そのため、冬日の初日は12月31日と観測開始以来2番目に遅い記録になりました。その後、1月の中旬から2月の中旬にかけては下層を中心に寒気が入り寒い日が続きましたが、3月に入ると中旬以降急速に気温が上がり、遅い冬の訪れに対して最も早い春の訪れとなりました。
●最低気温0℃未満終日の記録 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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※順位は月日の早い方からで、1953年から2008年の統計
●2月から3月にかけての日立市役所における日平均気温の推移とつくばにおける850hPaの気温の推移
●参考:6日09時と14日09時の地上天気図及び高層(500hPa面)天気図
※500hPa面高層天気図において、実線は等高度線を、点線は等温線を表しています。また、観測地点における上段の数値は、その地点の500hPaの高さにおける気温を、下段の数値は、同じ高さにおける気温と露点温度の差を表しています。
気象衛星で雲の変化を見ると、寒気が東へ抜けていく様子がよく分かります。高度500hPaで中心付近に-40℃の寒気を持つ寒冷渦が北日本を東進していた5日の画像をでは、寒気による筋状または網目状の対流雲が日本海から日本の南海上に広がっています。寒冷渦の東進に伴い、日本海から日本の南海上の対流雲はしだいに少なくなっていき、9日には日本付近ではまったくなくなりました。かわって、東シナ海には低気圧に伴う雨雲が進んできています。10日の午後には低気圧は日本の東へ進みましたが、後面への寒気の流入はなく、日本海には筋状雲は発生しませんでした。
●4日から11日にかけての気象衛星可視画像
作成日 2008/03/11
名前 日立市天気相談所