日立市天気相談所

OBSERVATION観測

◇不安定な天気の夏

 月の前半は高気圧におおわれて晴れて、気温の高い日が多くなりました。14日から15日にかけて低気圧が東北東へ進んだ後、本州付近に前線が停滞し、低気圧が頻繁に日本付近を通るようになりました。下旬になると、日本の南に寒冷渦が停滞するとともに中国大陸に上層の気圧の谷が位置して南からの湿った空気が入りやすくなり、大気の状態が不安定になって雷を伴った大雨が各地で発生しました。幸い、日立市は暖湿流の中心に当たることがなく、14日を除いては極端に強い雨の降ることはありませんでしたが、曇りや雨の日が続きました。このため、月の日照時間は154.1時間と平年の85%でした。特に、下旬の日照時間は32.4時間と平年の54%しかありませんでした。また、月降水量は211.0mmと平年の142%になりました。

 気温の変化を見ると、月の前半は晴れて最高気温が30℃を超える日もありました。しかし、下旬になるとオホーツク海高気圧が強まり、下層へ冷たい空気が入るようになって下旬の前半は最高気温が25℃以下の日が続きました。この結果、月平均気温は24.4℃と平年より0.4℃低くなりました。

8月の気象観測値
観測要素 観測値 平年値
月平均気温(℃) 24.4 24.8
月降水量(mm) 211.0 148.2
月日照時間(時間) 154.1 181.3
旬日照時間(時間)
観測値 平年値
上旬 72.4 61.9
中旬 49.3 59.9
下旬 32.4 60.1

 ●8月の日立市役所における日平均気温とつくばにおける500hPa気温の推移

2008年8月の日立市役所における日平均気温の推移 2008年8月のつくばにおける500hPa気温の推移

 7月に引き続き、8月も寒気や湿った空気の影響で大気の状態が不安定になる日が多く、各地で雷雨が頻発しました。8月4日から9日にかけては、本州中部を南下した前線の影響で、関東甲信、東海、近畿、四国、九州地方を中心に局地的に雷を伴う大雨となりました。幸い日立市では大気の不安定領域がかからず、8月5日の昼過ぎに雨量19mmの雷雨があっただけでした。10日から12日にかけては高気圧におおわれていったん天気は安定しましたが、13日になると高気圧が弱まり西から湿った空気が入るようになり、再び各地で雷雨が頻発するようになりました。14日には、東北地方を東進した低気圧の南側に西から湿った空気が入り、昼過ぎから栃木県北部で雷雲が発生しました。その後、雷雲は発達しながら茨城県北部から栃木県全体へ広がっていきました。茨城県北部の雷雲は、15時頃から南東へ進み始め、16時には日立市北部へかかってきました。

 その後も雷雲は南東へ進み、16時40分頃には雷雲の中心が日立市役所付近へかかりました。この後、日立市役所付近で雷雲が急速に発達し、市役所から多賀地区にかけて、雷を伴って一時的に非常に激しい雨が降りました。日立市役所では16時38分から16時48分にかけての10分間に22.5mmの雨量を記録しました。また、16時34分から17時34分にかけての1時間には77.0mmの雨量を記録しました。これは、1999年10月27日に低気圧に伴う雷雨により記録した最大1時間降水量88.0mmに次いで、日立市役所における観測開始以来の多い記録です。この雨の影響で、末広町から千石町を中心に床上浸水7件、床下浸水17の被害が発生しました。

 雷雲は南東へ進んでしだいに弱まり、日立市役所では17時40分には雨は小ぶりになって晴れ間も見えてきました。今回の雷雲は、比較的規模が小さく順調に南東へ進んだため、日立市役所で強い雨が降っていた時間は16時35分から17時40分にかけての約1時間でしたが、市役所の真上で雷雲が急速に発達したため、16時30分からの30分間に52mmの猛烈な雨が降りました。なお、雷雲の中心がかからなかった市の北部や南部では、総降水量は日立市役所の半分以下でした。

降水量の記録(1953年〜2008年の統計)

1時間降水量の記録(mm)

順位 降水量 年月日 時 刻 備    考
1 88.0 1999/10/27 21時14分 雷雨(発達した低気圧)
2 77.0 2008/08/14 17時34分 雷雨(暖湿流)
3 73.0 1980/09/03 19時10分 雷雨
4 66.7 1962/08/24 16時06分 雷雨(寒冷前線)
5 60.7 1962/07/14 01時45分 雷雨(寒冷前線)

10分間降水量の記録(mm)

順位 降水量 年月日 時 刻 備    考
1 30.3 1968/06/29 15時09分 雷雨(寒冷前線)
2 26.0 1999/10/27 21時00分 雷雨(発達した低気圧)
3 22.5 2008/08/14 16時48分 雷雨(暖湿流)
4 21.0 1980/09/03 18時30分 雷雨
5 20.0 1993/09/10 18時22分 雷雨(上層寒冷渦)
5 20.0 1978/08/16 17時30分 雷雨(熱雷)

 8月14日の雷雨の状況

2008年8月14日の10分間降水量の推移(日立市役所) 2008年8月14日の降水量分布
2008年8月14日の10分間降水量の推移(日立市役所) 2008年8月14日の降水量分布
2008年8月14日17時の降水量レーダー図 2008年8月14日17時の広域降水量レーダー図
2008年8月14日17時の降水量レーダー図 2008年8月14日17時の広域降水量レーダー図

 【参考】8月14日15時の地上天気図と16時30分の気象衛星可視画像

2008年8月14日15時の地上天気図 2008年8月14日16時30分の気象衛星可視画像
2008年8月14日15時の地上天気図 2008年8月14日16時30分の気象衛星可視画像

 ●8【参考】8月上旬と下旬の500hPa平均高度の比較

 上旬は、弱いながらも日本付近は高気圧におおわれました。下旬になると、オホーツク海に上層の尾根が停滞し、地上ではオホーツク海高気圧が発達しました。一方、中国大陸に上層の気圧の谷にが位置するとともに、日本の南も低圧部となりました。このため、日本付近は西谷となりやすく、南西と南から湿った空気が入りやすくなりました。

2008年8月4日から8日の500hPa平均高度 2008年8月24日から28日の500hPa平均高度
2008年8月4日から8日の500hPa平均高度 2008年8月24日から28日の500hPa平均高度

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作成日:2008/09/12
一部追加:2013/05/02
名前 日立市天気相談所