OBSERVATION観測
◇引き続き気温の変化が大きい
月の初めは、3月末からの偏西風の蛇行に伴う寒気の影響で気温が低くなりました。特に、1日から2日にかけては寒冷渦が東日本を通過した影響で気温が低くなり、山間部では1日の夕方から降り出した雨が雪に変わり、2日の朝には市役所から白く冠雪した神峰山(標高587m)が見られました。この寒冷渦が東へ抜けた後、日本付近は高気圧におおわれて晴れる日が続くようになりました。これとともに、下層へ西から暖かい空気が入るようになり、気温も平年を上回るようになりました。
15日に低気圧が発達しながら本州付近を進んだ後、下旬の前半にかけて気圧の谷や本州の南の前線の影響で曇りや雨の日が多くなりました。25日から26日にかけて、再び低気圧が発達しながら本州南岸を進んだ後、本州付近には強い寒気が南下してきて、気温はかなり低くなりました。この結果、月平均気温は13.0℃と平年より1.0℃高くなりました。しかし、旬別の平均気温を見ると、上旬は11.7℃(平年比+1.5℃)、中旬は14.4℃(平年比+2.2℃)と平年より高くなりましたが、下旬は12.9℃(平年比-0.8℃)と平年より低くなり、3月に引き続き気温の変動が大きくなりました。
また、中旬後半から下旬前半を除いて高気圧におおわれ晴れる日が続いたため、日照時間は219.7時間と平年の126%になり、4月の日照時間としては観測開始以来3番目に多い記録となりました(全天日射量も、同じように観測開始以来3番目に多い記録でした)。その一方で、月半ばから下旬の前半にかけて本州付近を低気圧が発達しながら通過するたびにまとまった雨が降ったため、月降水量は210.5mmと平年の153%になりました。
4月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 13.0 12.0 月降水量(mm) 210.5 137.1 月日照時間(時間) 219.7 175.0
気温の旬変化(℃) 旬 平均気温 旬平年値 上旬 11.7 10.2 中旬 14.4 11.9 下旬 12.9 13.8
●4月の全天日射量と日照時間の記録
全天日射量(MJ/m2) 順位 年 全天日射量 1 2001 575.1 2 2004 571.8 3 2009 563.5 4 2005 555.6 5 1988 539.8 平年値 458.6
日照時間(時間) 順位 年 日照時間 1 2001 234.4 2 2004 232.5 3 2009 219.7 4 1981 219.7 5 2005 216.4 平年値 175.0
気温の変動が大きかったことから、桜の開花から満開までの期間が地域によって大きく異なりました。3月の中旬は全国的に高温となり、桜の開花が進んで東京では3月21日に平年より1週間早く開花しました。水戸でも3月27日に平年より8日早く開花しましたが、3月24日以降は寒気におおわれて気温の低い日が続き、開花の進み具合が遅くなりました。日立市のかみね公園では、平年より2日早い4月3日にようやく桜の花が開花しました。また、東京では開花から12日たった4月2日にようやく満開を迎えました。
しかし、4月2日に寒冷渦が関東地方の東へ抜けた後、暖かい空気におおわれるようになって気温が上がっていきました。特に、7日以降は内陸部を中心に最高気温が20℃を超えるようになり、水戸では開花から12日たった4月8日に桜が満開となりました。また、日立市のかみね公園では開花から7日たった4月10日に満開となりました。一方、開花が気温の高い時期にあたった東北地方南部では、開花から満開までの期間が非常に短くなりました。仙台では4月7日に開花した後、3日後の10日には満開となりました。さらに、山形では4月11日に開花した2日後の13日には満開となりました。日立市は、桜の開花がちょうど気温の変わり目にあたったため、開花から満開までの日数が平年とあまり変わりませんでした。
●今年の桜の花の開花の状況(関東地方から東北地方)
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●4月の日立市役所における日平均気温の推移とつくばにおけ高層の気温の推移(09時)
※上のグラフの元データ:エクセル2000ファイル(114KB)
地上天気図では、気温が高くなった10日と気温が低くなった28日とは、いずれも移動性高気圧におおわれて本州付近では晴れの領域が広がりました。しかし、高層天気図を見ると両日には大きな違いがありました。10日の500hPa面高層天気図によると、北系の偏西風はバイカル湖付近から北海道を流れています。一方、九州付近には動きの遅い寒冷渦があり、本州中部はこれらの間に入って気圧の尾根となっています。これに対応して、850hPa面では関東地方の南海上から九州付近に気温に低い領域が広がっていますが、本州中部は9℃の等温線で示されるように中国大陸から朝鮮半島を経由して東へのびる暖気におおわれました。
それに対して29日の500hPa面高層天気図を見ると、偏西風は日本付近で南北に大きく蛇行し、-24℃の等温線で示されているように寒気が北海道から九州まで南下しています。このため、850hP面でも9℃の等温線は中国大陸まで後退し、0℃の等温線が関東地方まで南下しました。日立市役所における両日の最高気温をみると、10日は24.7℃(平年値は15.3℃)で7月上旬並みの気温に、28日は14.2℃(平年値18.5℃)で4月上旬並みの気温になりました。
今年に入って月平均気温は平年よりも高目に経過していますが、偏西風の南北蛇行が大きくなって強い寒気が南下して寒の戻りがあるなど、気温の変動が大きくなっています。
●参考:10日と28日10時の気象衛星可視画像
●参考:10日と28日12時の地上天気図及び10日21時と28日09時の850hPa面と500hPa面高層天気図
※850hPa面と500hPa面の高層天気図において、実線は等高度線を、点線は等温線を表しています。また、観測地点における上段の数値は、その地点の850hPaまたは500hPaの高さにおける気温を、下段の数値は、同じ高さにおける気温と露点温度の差を表しています。850hPa面高層天気図の網掛けの部分は、気温と露点温度の差が3℃未満であることを表しています。
作成日 2009/04/16
名前 日立市天気相談所