OBSERVATION観測
◇気温の変動が大きかった
上旬と中旬は移動性高気圧におおわれて、晴れる日が多くなりました。しかし、下旬に入ると強い寒気を伴った上層の低気圧(寒冷渦)が日本海をゆっくりと東進したため、曇りや雨の日が多くなりました。旬別の日照時間を見ると、上旬は89.4時間(平年比158%)と平年よりかなり多くなりました。しかし、下旬は54.時間と平年の83%しかありませんでした。この結果、月の日照時間は205.5時間と平年の118%になりました。降水量は、上旬から中旬にかけては平年より少なくなりました。しかし、下旬に日本海を東進した寒冷渦の南東側へ湿った空気が入り、23日から24日にかけて降水量が100mmを超える雨が降ったため、月降水量は179.0mmと平年の111%になりました。
一方、気温の推移を見ると、4月に引き続き偏西風の南北への蛇行が大きく、寒気の南下する時があって気温の変動が大きくなりました。旬別の平均気温を見ると、南から暖かい空気の入った上旬は16.7℃と平年より1.7℃高くなりました。しかし、寒冷渦に伴い寒気の入った中旬は14.9℃と平年より1.1℃低く、同じく下旬も15.0℃と平年より2.2℃低くなりました。この結果、月平均気温は15.5℃と平年より0.6℃低くなりました。
5月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 15.5 16.1 月降水量(mm) 179.0 160.6 月日照時間(時間) 205.5 174.8
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 16.7 15.0 中旬 14.9 16.0 下旬 15.0 17.1
旬日照時間(時間) 旬 観測値 平年値 上旬 89.4 56.5 中旬 62.1 53.1 下旬 54.0 65.1
上旬の前半は、日本の南を東進する移動性高気圧におおわれて晴れるとともに、下層へ南から暖かい空気が入り気温が上がりました。特に、4日の午前中は南西の風が吹いたために気温が上がり、最高気温は26.3℃を記録して今年初めての夏日(日最高気温25℃以上の日)となりました。なお、夏日初日の平年日は5月15日で、それよりも11日早くなっています。
中旬に入り、12日から15日にかけては日本海から東北、関東地方を寒気を伴った上層の低気圧(寒冷渦)が南東へ進みました。上層(500hPa面)の寒気の中心は13日の夜には東へ抜けていきました。しかし、下層(850hPa面)の寒気はそれより遅れて14日から15日にかけて関東地方へ南下してきました。この寒気の影響で、日立市では14日、15日と晴れても気温はあまり上がりませんでした。日立市役所における14日の平均気温は11.0℃、15日の平均気温は10.6℃で、4月上旬並みの気温でした。特に、15日は下層の寒気の中心が通過したことと、日中は冷たい東寄りの風が入ったことから昼間も気温はほとんど上がらず、日立市役所における最高気温は14時29分に記録した13.2℃で、平年より6℃近く低くなりました。
その後、下旬の前半にかけては再び南から暖かい空気が入るようになり、いったん気温は平年より高くなりました。しかし、下旬に入り華中で上層の偏西風帯から切り離された寒冷渦が、下旬の半ばには黄海から日本海へゆっくりと進んできました。この寒冷渦の前面へ向かって南から湿った空気が入るようになり、日立市では曇り雨の日が多くなりました。このため、下層の気温の割には地表の気温は上がりませんでした。寒冷渦は、26日から28日にかけて本州上を通過して関東地方の東へ進みました。寒冷渦が東進するにつれて下層を中心に寒気が南下し、気温が低くなりました。寒冷渦の中心が通過した27日は最高気温が13.5℃までしか上がらず、日平均気温も11.7℃と4月中旬並みの気温でした。
●5月の日平均気温と日最高気温の推移(日立市役所)
●5月のつくばにおける高層気温の推移(09時)
※上記4つのグラフの元データ:エクセル2000ファイル(101KB)
●参考:5月10日から17日にかけての09時の500hPa面高層天気図
12日から13日にかけて、寒冷渦が東北地方を東へ進み、寒気が南下しました。その後、14日から15日にかけて後続の上層の気圧の谷が東日本を通過して、一段と強い寒気が下層へ入りました。
●参考:5月22日から29日にかけての09時の500hPa面高層天気図
25日から27日にかけて、寒冷渦が東北地方を東進しました。寒冷渦の南東側に入った23日から24日にかけては南から暖かい空気が入り、雨雲が発達して大雨となりました。日立市役所では、23日から24日にかけての総降水量が118.0mmになりました。寒冷渦が東へ抜けた後、日本の東が気圧の谷場となり、日本付近の下層へ寒気が入り続けるようになって気温が低くなりました。
※500hPa面の高層天気図において、実線は等高度線を、点線は等温線を表しています。また、観測地点における上段の数値はその地点の500hPaの高さにおける気温を、下段の数値は同じ高さにおける気温と露点温度の差を表しています。
作成日 2010/06/14
名前 日立市天気相談所