OBSERVATION観測
◇天気の変化の大きかった師走
中旬から下旬にかけて、上層に寒気を伴った低気圧が数日の周期で通過することが多く、気温の変化が大きくなりました。また、寒気の南下に伴って、16日の強風や20日の雪のように、一時的に荒れ模様の天気になるときがありました。それ以外の期間は偏西風の蛇行が小さく、低気圧が数日の周期で通過し、冬型の気圧配置は長続きしませんでした。このため、月全体としては気温、降水量、日照時間のいずれも平年並みの値になりました。
12月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 7.5 7.2 月降水量(mm) 38.0 31.3 月日照時間(時間) 180.4 189.9
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 9.0 8.5 中旬 6.8 7.0 下旬 6.7 6.2
●12月の日立市役所における日平均気温とつくばにおける500hPa気温の推移
2日に台風第21号が関東地方の南を東北東へ進んだ後、気圧系が変わり偏西風が本州付近を流れるようになりました。このため、暖かかった11月から一転して南から暖かい空気におおわれることが少なくなり、気温は平年並みに下がりました。しかし、低気圧が頻繁に通過したことから、晴れて風が弱まることによる冷え込みがなく、最低気温が0℃未満となる日がなかなか現れませんでした。このような中、26日の夜に寒気を伴った上層の気圧の谷が通過し、27日の明け方にかけて雪が降って積雪が1cmとなりました。その後、急速に晴れてきたことから27日の朝は最低気温が-2.1℃まで下がり冬日初日となりました。この記録は、1968年の12月30日に次いで観測開始以来4番目に遅い記録でした。
●12月の日立市役所における日最低気温の推移 |
※順位は日にちの遅い順。 ※1958年は、12月31日になっても |
◇寒冷渦による荒天(16日と20日)
15日夜から16日の朝にかけて、高度5400mで中心の気温が-33℃以下の寒気を伴った上層の気圧の谷が、日本海から関東地方の東海上へ進みました。日立市では、上層の気圧の谷が通過した8時過ぎから北西の季節風風が強まりました。12時頃、一時的に風の弱まるときがありましたが、平均風速で10m/s、瞬間風速で20m/sを超える北西の風が吹き、12時53分には最大瞬間風速25.0m/sの風を観測しました。この時の寒気は規模が小さく、昼過ぎには寒気の中心が東海上へ抜けたため、強い風も14時過ぎには収まりました。
20日は、高度5200mで中心の気温が-40℃以下の寒気を伴った上層の低気圧が、東北地方へ南下してきました。この寒気は、15日の寒気に比べて中心付近の温度が低く(寒気が強い)、規模も大きかったため、低気圧の通過後、日本付近は冬型の気圧配置が強まり、日本海側を中心に強い風と雪に見舞われました。
この強い寒気の影響で、20日の朝には寒気の中心の真下付近に低気圧性の雲渦が発生しました。この雲渦は昼前から南下を始め、東北地方南部を通過して、夕方には関東地方の東海上へ進みました。雲渦は陸地に上陸して急速に形が崩れましたが、南側に雪雲を伴っていたため、福島県から茨城県北部にかけて一時的に雪が降りました。日立市役所では、18時に最深積雪3cmを記録しました。この日の気温と海面気圧の推移を見ると、10時過ぎから海面気圧が下がり始めて15時に最も低くなっており、雲渦に伴う低圧部が最も近くを通過したことが分かります。また、上層の寒気の通過に伴い、この後18時前に最も気温が低くなり、この日の最低気温0.4℃を観測しました。
●20日の最深積雪(cm) 観測地点 最深積雪 観測地点 最深積雪 日立市役所 3 宇都宮 3 水戸(金町) 0 前橋 14 つくば 0 熊谷 0 小名浜 2 東京 0
●12月16日と20日の気温と海面気圧の推移
●12月16日と20日の風速の推移
●15日〜22日の地上天気図
●参考:16日と20日09時の地上天気図と500hPa面高層天気図
2003年12月16日09時の天気図 | 2003年12月20日09時の天気図 |
2003年12月16日09時の500hPa高層天気図 | 2003年12月20日09時の500hPa高層天気図 |
●16日と20日12時の気象衛星水蒸気画像
20日は、上層寒気の中心の真下に低気圧性の雲渦が発生して南東へ進みました。気象衛星で雲の動きを見ると、この上層の寒気の動きがよくわかります。19日21時の画像を見ると、日本海から東シナ海にかけては筋状の雲におおわれており、上層の寒気が強いことを表しています。特に、朝鮮半島北部から若狭湾にかけて帯状の対流雲がかかり、大雪のパターンを示しています。20日3時には、津軽海峡の西で雲が渦を巻き始め、9時には小さな低気圧が発生しています。
この雲渦は南南東へ進んで東北地方に上陸した後、形が崩れましたが、雲渦の南側へ巻き込む雪雲が南東へ進み、福島県から茨城県北部に雪を降らせました。上層の寒気の中心は18時過ぎには東海上へ抜け、中心付近に残っていた雲もしだいに不明瞭になっていきました。
●参考:気象衛星赤外画像(19日21時から20日22時)
〜12月20日22時 |
|||
【観測日誌2003年へ】 【ホームページへ】
作成日 2004/01/19
訂補日 2005/01/04
訂補日 2015/01/19
名前 日立市天気相談所