OBSERVATION観測
◇ぐづついて気温の変化の大きかった5月
上旬と月半ばから下旬の初めにかけ、東シベリアから華南にかけての大陸東部で、上層の気圧の谷が停滞しました。このため、日本付近は南西の湿った空気が入りやすく、天気の悪い日が続きました。月平均気温は16.7℃とほぼ平年並でしたが、降水量は229.5mmと、平年の143%になりました。また、日照時間も138.8時間と平年の79%にしかなりませんでした。
21日に、台風第2号が関東地方の南海上を北東へ進んだ後、関東地方では北東の風とともに、北から冷たい空気が入ってきました。このため、22日の最高気温は11.0℃、23日の最高気温は12.7℃と極端に低くなりました。その後、気温は上がり始め、29日から31日にかけては日本海側の前線に向かって南からの暖かい空気が入り、気温が高くなりました。特に31日はフェーン現象が起こり、日最高気温が31.6℃と、5月の最高気温としてはこれまでで最も高くなりました。
5月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 16.7 16.1 月降水量(mm) 229.5 160.6 月日照時間(時間) 138.8 174.7 月日照率(%) 0.32 0.40
月最高気温(℃) 順位 年 日 最高気温 1 2004 31 31.6 2 1988 22 30.2 3 2004 30 29.8 4 1993 15 29.6 5 1961 27 29.6 ※順位は数値の大きい方からで、1953年から2004年の統計
●5月の日立市役所における日平均気温とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移
22日から23日は、寒気を伴った上層の低気圧が日本海から東北地方北部を通過した影響で、関東地方では北東の風が入り、1日中雲がかかったため、日中になっても気温が上がりませんでした。特に、茨城県の東部では、日最高気温が12℃近くまでしか上がらず、日最高気温としては平年の3月下旬の気温でした。
24日からは、移動性高気圧におおわれて晴れの天気が続き、気温も徐々に上がってきました。29日以降は、南風とともに上層に暖かい空気が入ってくるようになったため、気温も25℃を超えるようになりまた。特に、31日は強い南西の風が吹いてフェーン現象が起きたため、2時過ぎから気温が25℃近くまで上がり、13時36分には日最高気温31.6℃を記録しました。
なお、31日の関東地方の気温の分布をアメダスの観測結果で見てみると、通常のフェーン現象が起きているときと異なり、関東地方南部では気温が30℃以下で、あまり高くなっていません。気温が30℃を超えているのは、茨城県の北部から中部と栃木県から埼玉県にかけての、帯状に広がった地域に限られています。これは、関東地方南部では雲がかかって日射がなかったことと、下層における気温の高い空気が、関東地方中部を南西から北東へ進んだためと考えられます。
例年、5月は気温の変化が大きくなりますが、特に今年は下旬を中心に気温の変化が非常に大きくなりました。22日の日平均気温10.3℃(平年の4月下旬の気温)から31日の日平均気温24.2℃(平年の7月下旬の気温)まで、10日間で平年の気温の約3か月間の変化をしたことになります。
●21日から31日にかけての気温の変化(1時間値)と31日の気温と気圧の変化
●23日の気温の分布と31日の気温と風の分布
気象衛星水蒸気画像は、上層から中層の大気の流れを視覚的に表します。23日と31日の気象衛星の水蒸気画像を見ると、どちらも日本付近では、偏西風が南西から北東へ流れており、南からの湿った空気が入り、天気が悪いことを示しています。しかし、偏西風の東西方向の位置を比べてみると、23日の方が31日に比べて偏西風の位置がやや東よりで南北に立っています。これは、偏西風の西側の寒気の南下が強いことを表しています。
また、可視画像で見ると、31日は関東地方の中部だけ晴れ間が広がっており、晴れて気温が上がったのは、フェーン現象により雲が消えた、関東地方の一部だけだったことが分かります。
●参考:23日と31日の地上天気図と気象衛星画像
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2004年05月23日12時の気象衛星可視画像 | 2004年05月31日12時の気象衛星可視画像 |
2004年05月23日12時の気象衛星水蒸気画像 | 2004年05月31日12時の気象衛星水蒸気画像 |
作成日:2004/06/16
訂補日:2013/06/10
名前 日立市天気相談所