OBSERVATION観測
◇秋の嵐
強い寒気の南下がなく、高気圧におおわれて暖かい日が多かったため、月平均気温は17.9℃と平年より1.3℃高くなりました。特に最低気温は下がらず、月最低気温は11.2℃と1977年の10.7℃以来、29年ぶりに10℃を下回ることがありませんでした。(10月の最低気温としては、高い方からの日立市役所観測記録順位第1位)
また、今月は上層の気圧の谷が日本の西に位置し、本州付近の上層では西南西からの流れが続くことが多く、関東地方では雲の広がりやすい天気が続く日がありました。さらに、6日から7日にかけてと23日から24日にかけては、寒気を伴った上層の低気圧が本州付近を通過し、関東地方では沿岸部を中心に雨量が多くなりました。このため、月日照時間は143.8時間(平年の90%)と、平年よりやや少なくなりました。一方、月降水量は220.0mmと平年の138%になりました。
10月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 17.9 16.6 月降水量(mm) 220.0 159.2 月日照時間(時間) 143.8 152.5
10月最低気温(℃) 順位 年 最低気温 1 2006 11.2 2 1977 10.7 3 1953 10.7 4 1972 10.1 5 1994 9.9
●10月の日立市役所における日平均気温とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移
5日に黄海へ進んできた寒気を伴った上層の気圧の谷は、6日から7日にかけて深まりながら本州付近を東へ進みました。また、5日の夜には日本の南へ台風第16号が北上してきました。台風は、5日21日時点で中心気圧990hPa、最大風速20m/sと弱い台風でした。この後、台風本体はさらに弱まっていきましたが、台風に先行する形で暖かく湿った空気が北東へ進み、6日の朝には関東地方の南へ進みました。
この暖気と気圧の谷後面の寒気の影響で、5日12時に四国沖で発生した低気圧が、6日に急速に発達しながら本州の南岸を進み、7日には三陸沖へ進んで中心気圧972hPaと非常に発達しました。このため、関東地方から北海道地方にかけての太平洋側で最大風速25m/sを超える暴風となり、海上では8mを超える大しけとなりました。 また、紀伊半島と関東地方から東北地方の太平洋側、及び北海道のオホーツク海側等で降り始めからの総雨量が250mmを超える大雨となりました。(日立市役所では、5日12時の降り始めから7日8時の降り終りまでの総降水量は、132.5mmでした。)
下旬にも、同じように寒気を伴った上層の気圧の谷が、本州上を通過しました。23日に山陰沖へ進んできた寒気を伴った上層の気圧の谷は、24日から25日にかけて東海地方から関東地方を東へ進みました。6日の場合と異なり、気圧の谷前面への顕著な暖気の流入はなく、地上の低気圧は発達しませんでしたが、下層で北と南の間の温度差が大きく、また北の高気圧との気圧傾度が大きくなったため、沿岸部を中心に風速25m/s前後の強い北東の風が吹きました。また、上層の寒気の影響で、茨城県の鹿嶋市付近で雨雲が発達し、局地的に強い雨が降りました。23日15時から24日21時までの降水量は、鹿嶋市鹿嶋で264mmになりました。(日立市役所では、23日16時の降り始めから24日13時の降り終りまでの総降水量は、22.5mmでした。)
●参考:10月6日と24日の地上天気図と高層天気図
2006年10月06日21時の地上天気図 | 2006年10月06日21時の500hPa高層天気図 |
2006年10月24日09時の地上天気図 | 2006年10月24日09時の500hPa高層天気図 |
※高層天気図において、実線は等高度線を、点線は等温線を表しています。観測地点における上段の数値は、その地点の500hPaの高さにおける気温を、下段の数値は、同じ高さにおける気温と露点温度の差を表しています。
上層の気圧の谷が近づいてきた5日の朝には、関東地方から中国、四国地方にかけて雨雲が発生し、北東へ進みました。日立市でも、昼頃から雨が降り始め、7日の朝にかけて1時間に3〜7mmの雨が降り続きました。雨が強く降ることはありませんでしたが、1日以上雨が降り続いたたため、日立市役所における総降水量は132.5mmになりました。
また、地上低気圧が関東地方へ近づいてきた6日の昼前から北東の風が強まり、平均風速で10m/s、瞬間風速で20m/sを越える風が吹くようになりました。午後になって風は一段と強まり、16時56分には最大瞬間風速29.2m/sの北北東の風を記録しました。夜になっても強い風が続きましたが、低気圧が東へ抜けた7日の0時過ぎには、風向が北から北西へ変わるとともに、強い風もやや収まりました。しかし、上層の気圧の谷が東へ抜けた7日の日中には西北西の風が強まり、7日の10時00分には25.0m/sの西北西の風を観測しました。低気圧が三陸沖へ離れた夕方には、この強い風も収まりました。
なお、北東の強い風が長時間吹き続けたことと、低気圧が発達して気圧が7日の03時55分には983.1hPaまで下がったこと及び7日が満月で大潮に近づいていたことから潮位が高くなりました。この影響で、満潮時に日立市南部の瀬上川が久慈町3丁目地内で溢水し(河川水があふれ出し)、床上浸水の被害が発生しました。
●10月6日の風速の記録(単位:m/s)
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平均風速 | 瞬間風速 | ||||
最大風速 | 同風向 | 同時刻 | 最大風速 | 同風向 | 同時刻 | |
日立市役所 | 13.3 | 北北東 | 20時25分 |
29.2 |
北北東 | 16時56分 |
南部支所 | 13.2 | 北東 | 16時02分 | 31.1 | 東北東 | 15時51分 |
水戸 | 13.1 | 北北東 | 16時10分 | 29.6 | 北北東 | 16時16分 |
●10月6日から7日にかけての風速及び気温と海面気圧の時間変化(日立市役所)
●10月5日から8日にかけての09時の地上天気図
23日の朝に、寒気を伴った上層の気圧の谷が、朝鮮半島へ進んできました。この気圧の谷の前面に、南から湿った空気が入った影響で、日立市では22日の夕方から23日の昼にかけて雨が降りました(日立市役所における降水量は、49.5mm)。23日の昼過ぎは曇りとなりましたが、気圧の谷の東進に伴い南北に帯状に伸びた雨雲がかかってきて夕方から雨が降り始め、24日の昼過ぎまで雨が降り続きました(日立市役所における降水量は、22.5mm)。
6日の場合と異なり、気圧の谷の前面に南から暖かい空気が入ることがなかったため、地上低気圧は発達しませんでしたが(最低気圧は24日14時22分の1010.8hPa)、北の高気圧との間で気圧傾度が大きくなり、関東地方の沿岸部を中心に北東の風が強く吹きました。日立市でも、23日の昼前から風が強まり、平均風速で7m/s、瞬間風速で15m/s前後の風が吹くようになりました。上層の気圧の谷が近づいてきた24日の朝からはさらに風が強まり、平均風速で10m/s、瞬間風速で20m/sを超えるようになり、14時23分には最大瞬間風速25.7m/sの北北東の風を観測しました。
上層の気圧の谷が東へ抜けた24日の夜には、風は平均風速で7m/sとやや弱まりました。25日になると、風はしだいに弱まっていき、夕方には北から西風に変わるとともに、強い風は収まりました。
●10月24日の風速の記録(単位:m/s)
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平均風速 | 瞬間風速 | ||||
最大風速 | 同風向 | 同時刻 | 最大風速 | 同風向 | 同時刻 | |
日立市役所 | 12.6 | 北北東 | 14時31分 |
25.7 |
北北東 | 14時23分 |
南部支所 | 11.4 | 北東 | 10時12分 | 24.4 | 北東 | 15時15分 |
水戸 | 11.7 | 北北東 | 08時40分 | 24.5 | 北北東 | 09時44分 |
●10月24日から25日にかけての風速及び気温と海面気圧の時間変化(日立市役所)
作成日:2006/11/13
訂補日:2013/06/20
名前 日立市天気相談所