OBSERVATION観測
◇中旬から晴れる日が多くなり、下旬には早くも秋の気配
8月に入っても、偏西風が南北に大きく蛇行して東経130度付近が気圧の谷場となる状態が続きました。このため、本州付近からみると西谷となって南からの暖かく湿った空気が入りやすくなり、曇りや雨の日が続きました。特に、7日から10日にかけては日本の南を西または北へ進んだ台風第8号と第9号の影響で一段と湿った空気が入り、九州から東北地方にかけて大雨となった所がありました。14日になって低気圧が北海道の南東へ抜けた後、気圧の場が変わって西谷が解消し、本州付近は移動性高気圧におおわれて晴れる日が続くようになりました。特に、下旬は大陸から進んできた冷たく乾いた空気を持つ高気圧におおわれて、秋を思わせるような陽気になりました。
上旬は天気が悪く、北東の風とともにに下層へやや冷たい空気が入ったため気温はあまり上がらず、旬平均気温は平年より1.8℃低くなりました。中旬から下旬にかけても、晴れた割には気温は上がりませんでした。この結果、月平均気温は23.4℃と平年より1.4℃低くなりました。日照時間は、中旬から下旬にかけて平年を上回ったものの、上旬の天気が悪かったため月の日照時間としては158.3時間と平年の87%でした。降水量については、中旬から下旬にかけてほとんど雨が降らなかったものの、台風の東側を回る湿った空気が入り9日から10日にかけて143.0mmの雨が降ったことから、月降水量は217.0mmと平年の1.5倍(平年比146%)になりました。
8月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 23.4 24.8 月降水量(mm) 217.0 148.2 月日照時間(時間) 158.3 181.3
気温の旬変化(℃) 旬 平均気温 旬平年値 上旬 23.2 25.0 中旬 23.9 24.9 下旬 23.3 24.4
日照時間の旬変化(時間) 旬 日照時間 旬平年値 上旬 23.8 61.7 中旬 67.4 61.0 下旬 67.1 58.6
日最高気温が30℃以上となる真夏日の日数を見ると、30日に寒冷前線の南側に入って一時的に暖かい空気が入り、最高気温が30.4℃まで上がった他は真夏日となる日はありませんでした。この結果、8月の真夏日の日数は1日となり、1980年の0日に次いで少ない記録となりました。また、8月の最高気温としても観測開始以来3番目に低い気温でした。今年の8月は、太平洋高気圧が日本の東から南へ張り出し、本州付近をおおうことはありませんでした。このため、晴れて太陽に照りつけらるような暑さはなく、下旬には大陸からの冷涼な移動性高気圧におおわれて、秋を感じさせる陽気となりました。
●8月の最高気温の記録と真夏日の日数
最高気温(℃) 順位 年 最高気温 1 1980 28.7 2 1977 30.3 3 2009 30.4 4 1974 31.2 4 1969 31.2 4 1968 31.2
真夏日の日数 順位 年 日数 1 1980 0 2 2009 1 3 1988 3 3 1977 3 3 1976 3 平年値 10.6 ※順位は数値の小さい方からで、1953年から2009年の統計。
●参考:気温と日照時間の日推移
※最高気温推移グラフの元データ:エクセル2000ファイル(65KB)
上旬と下旬の高層天気図を比べてみると、上層における大気の流れが大きく異なっていることが分かります。4日の500hPa高層天気図をみると、上層の高気圧は日本の東に後退して日本海が上層の気圧の谷場となっています。このため、本州付近の上層では南西から湿った空気が入る形になっています。地上天気図で見ると、オホーツク海から日本海に高気圧が停滞し、本州南岸が低圧部となって天気がぐずつく梅雨時の気圧配置でした。
一方、25日の500hPa高層天気図をみると、上層の高気圧は日本の南か華南へ張り出し、本州付近は上層の気圧の谷が東へ抜けようとしているところです。気圧の谷の西側に入った本州付近の上層では北西からのながれとなり、乾燥した空気が流れ込んでいます。地上の天気図を見ると移動性高気圧が日本海を東へ進み、秋の気圧配置となりました。今年の8月は、太平洋高気圧の本州付近への張り出しがなく、梅雨から秋へと季節が飛んだ形になりました。
●4日及び25日09時の地上天気図と500hPa高層天気図
また、今年の8月は2つの台風が関東地方に近づきました。10日から11日にかけては台風第9号が本州の南を東へ、31日にから9月1日にかけては台風第11号が関東地方の東を北北東へ進みました。二つの台風とも規模が小さく勢力も弱かったため、日立市では台風の直接の影響はありませんでした。しかし、台風第9号については、台風の東側を回り込む形で南から暖か鵜湿った空気が本州付近へ入り、東北地方から九州地方北部の所々で大雨となりました。日立市でも、10日の朝に南から北上してきた雨雲が茨城県北部で発達して1時間に40mm前後の激しい雨が降り、総降水量も南部を除いて150mm前後になりました。特に、市の北部の十王では昼過ぎにも発達した雨雲が通過して激しい雨が降ったため、総降水量は190.5mmになりました。台風第8号は、11日の日中に関東地方の南海上を東へ進みましたが、日立市では台風の影響はなく9時過ぎから晴れ間が広がりました。
台風第11号は、日本の南から北上してきて31日の6時過ぎに八丈島を通過した後、房総半島の東から茨城県の東海上を北北東へ進みました。台風は31日の21時頃に日立市の東150kmの海上を通過しましたが、台風の規模が小さく勢力も弱かったため、大雨や強風になることはありませんでした。ただ、日本海に停滞する高気圧との間で気圧傾度が大きくなり、台風が近づいてくる前の30日朝から最も近づいた直前の31日20時にかけて、平均風速で6〜8m/sのやや強い北東の風が吹きました。最も風が強まったのは31日の昼過ぎで、日立市役所では12時44分に最大瞬間風速16.6m/sの北東の風を記録しました。
●台風第9号通過時の観測記録
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●台風第11号通過時の観測記録
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●10日09時の地上天気図と台風第9号の経路図及び10日06時の気象衛星赤外画像と十王交流センターにおける降水量の推移
●31日09時の地上天気図と台風第11号の経路図及び31日09時の気象衛星赤外画像と日立市役所における風速の推移
作成日 2009/09/11
名前 日立市天気相談所