OBSERVATION観測
◇曇りや雨の日が多かった晩秋
上旬は、移動性高気圧におおわれて晴れる日が多くなりました。中旬に入ると、上層の気圧の谷が中国大陸に停滞するようになり、日本付近は西谷の場となって低気圧が次々と通過したため、曇りや雨の日が多くなりました。下旬には日本付近の西谷は弱まり、東西の流れが強まりました。このため気圧系の動きが早くなり、おおむね1日おきに高気圧と低気圧が通過しました。この結果、上旬の日照時間は平年を上回りましたが、中旬の日照時間は平年の半分以下となり、月の日照時間も平年の83%にしかなりませんでした。一方、11日に本州南岸を進んだ低気圧により92.5mmの雨が降ったことから、月降水量は165.0mmと平年の約2倍になり、11月の降水量としては観測開始以来4番目に多い記録となりました。また、例年であれば冬型の気圧配置となる日が多くなって、日立市では乾燥した季節が始まります。しかし、今年は冬型の気圧配置になってもすぐに崩れて頻繁に低気圧が通過したため、月平均湿度は79%と11月の平均湿度としては観測開始来最も高い記録となりまし。
気温は、変動が大きくなりました。月初めは、強い寒気が南下して気温が低くなりました。その後、中旬にかけては南から暖かい空気が入り平年より気温が高くなりました。中旬後半に入ると、西から下層へ寒気が入ってくるとともに曇りや雨の日が多くなったため、気温は平年を下回りました。下旬の後半は、再び南から暖かい空気が入るようになって気温は平年を上回りました。この結果、月平均気温は12.0℃とほぼ平年並みになりました。
11月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 12.0 11.8 月降水量(mm) 165.0 81.2 月日照時間(時間) 133.6 161.9
日照時間の旬変化(時間) 旬 旬日照時間 旬平年値 上旬 63.2 53.5 中旬 22.4 51.8 下旬 48.0 56.6 ●11月の降水量と平均湿度の記録
降水量(mm) 順位 年 降水量 1 1970 255.6 2 1990 226.0 3 1975 197.2 4 2009 165.0 5 2003 164.5 平年値 81.2
平均湿度(%) 順位 年 湿度 1 2009 79 2 1954 76 3 2004 74 4 2003 73 5 1990 73 平年値 66 ※順位は数値の多い方からで、1953年から2009年の統計
2日から3日にかけて、上層に強い寒気を伴った気圧の谷が本州付近を通過して、一時的に気温が下がりました。その後、10日までは移動性高気圧におおわれて晴れの天気が続きました。中旬に入ると中国大陸で上層の気圧の谷が深まって停滞するようになり、日本付近の上層では西南西からの流れが続くようになりました。このため、南から湿った空気が入りやすくなるとともに、低気圧が頻繁に通過するようになりました。日立市役所における日照時間の推移を見ると、11日から日照の少ない日が続くようになっています。
なお、10日から11日にかけては本州南岸を東北東へ進んだ低気圧に向かって南から湿った空気が入り、太平洋側を中心に総降水量が100mmを超えた所がありました。日立市役所でも、11日の0時から22時までの総降水量が92.5mmに達しました。また、南部支所では地形の影響で発達した雨雲がかかり、11時00分から12時00分の1時間に33.0mmの激しい雨が降りました。
一方、中国大陸では気圧の谷に沿って、下層の寒気が華中へ南下するようになりました。この寒気が、気圧の谷の南側を回って日本付近へ入るようになり、月半ばから日立市でも気温が低くなってきました。つくばと福岡の850hPa面における気温の推移を見ると、中国大陸に近い福岡の方から先に気温が下がり始めるとともに気温の下がり方も大きく、寒気が中国大陸から西回りで入ってきたことが分かります。下旬に入ると、中国大陸の気圧の谷は徐々に解消し、寒気の流入も止んで気温は上がっていきました。
今年の11月は、月初めに強い寒気の影響で冬型の気圧配置となったものの、その後は冬型の気圧配置になることはほとんどありませんでした。また、冬型の気圧配置になっても一時的で長く続きませんでした。このため、北西の季節風が吹いて乾燥した状態になることがなく、下の日平均湿度のグラフに見るように日平均湿度が70%以上の日が多くなりました。この平均湿度が高い状態は、12月上旬まで続きました。
●参考:11月の平均気温(日立市役所)と850hPa面の気温の推移(09時のつくばと福岡)
●参考:11月の日照時間と平均湿度の推移(日立市役所)
※グラフの元データ:エクセル2000ファイル(84KB)
上層の大気の流れは、上旬から中旬にかけて大きく変わりました。5日平均500hPa高度・偏差図で見るように、上旬の日本付近は平年よりも高度が高く(正偏差場)、大気の流れは西から東への流れで寒気が南下しにくく、高温傾向が続きました。6日の気象衛星可視画像を見ると、日本付近は移動性高気圧におおわれて、九州を除いて広く晴れています。
中旬に入ると中国大陸で南北に上層の気圧の谷が深まり、日本付近では南西から北東への流れとなりました。また、500hPaの高度も平年より低くなり(負偏差場)、強風帯が日本付近に位置して低気圧の通り道となり、天気がぐずつきました。17日の気象衛星可視画像を見ると、日本付近には上層の流れに対応して、北東から南西へのびる雲域がかかり、雲の帯はさらに中国大陸南部へのびています。さらに、中国大陸では気圧の谷に沿って寒気が華中へ南下し、この寒気が西回りで中旬後半から日本付近へ入るようになり気温も低くなりました。この気圧場は下旬の後半には解消し、12月の上旬にかけて再び暖かい陽気に変わりました。
●参考:上旬と中旬における5日平均500hPa高度・偏差図と気象衛星可視画像の比較
※500hPa高度偏差図において、実線は等高度線を、破線は平年との偏差を表します。また、縦線で囲まれた部分は平年より高度が低い(負偏差)領域を表しています。
作成日 2009/12/22
名前 日立市天気相談所