OBSERVATION観測
◇曇りや雨の日が多く、気温が低くなる
前線を伴った低気圧が日本付近を頻繁に通過したため、曇りや雨の日が多くなりました。月間の風向頻度を平年の頻度と比べてみると、北から西そして南にかけての風向が平年よりも少なく、それに替わって北東の風向頻度が平年の2倍以上あり、冷たい北東風による下層雲の広がりやすい気圧配置が多かったことを表しています。このため、月の日照時間は146.3時間(平年比84%)と平年より少なくなりました。また、27日から28日にかけて沿海州をゆっくりと進む寒冷渦の南東側へ湿った空気が入り、総降水量131.5mmの雨が降ったことにより、月の降水量は251.5mmと平年の183%になりました。これは、4月の降水量としては日立市役所観測開始以来最も多い記録です。また、4月28日の降水量120.0mmも、4月の日降水量としてはこれまでで最も多い記録になりました。
一方、平均気温の推移を見ると、上旬は日本海側を進む低気圧の南側に入った日の前後で気温が大きく変動しました。低気圧の南側に入った日は南から暖気が入り、平均気温は平年を5℃近く上回りました。しかし、低気圧が通過すると強い寒気が入り、気温は平年を5℃近く下回りました。このため、上旬の平均気温は9.7℃と平年より0.5℃低くなりました。中旬に入って、13日に本州をはさむ形で低気圧が東へ進んだ後、下層へ断続的に寒気が入るようになり気温は低くなりました。そして、17日以降は上層へも寒気が入るようになり、日平均気温が平年を下回る日が続くようになりました。このため、中旬の平均気温は平年より3.0℃、下旬の平均気温は平年より3.3℃低くなりました。この結果、月平均気温は9.7℃と平年より2.3℃低くなり、4月の平均気温としては日立市役所観測開始以来3番目に低い気温となりました。
4月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 9.7 12.0 月降水量(mm) 251.5 137.1 月日照時間(時間) 146.3 175.0
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 9.7 10.2 中旬 9.0 11.9 下旬 10.4 13.8
●4月の気象観測の記録
4月の平均気温(℃)
順位 年 平均気温 1 1984 8.2 2 1965 9.4 3 2010 9.7
4月の降水量(mm)
順位 年 降水量 1 2010 251.5 2 1990 246.0 3 1999 230.5
4月の日最大降水量(mm)
順位 年月日 降水量 1 2010/04/28 120.0 2 2008/04/18 113.5 3 1971/04/29 97.8 ※順位は気温の低い方から及び降水量の多い方からで、1953年から2010年の統計
●4月の日立市役所における日平均気温の推移と風向頻度
※上のグラフの元データ:エクセル2000ファイル(90KB)
気温が低い状態の中、16日から17日の朝にかけて関東地方の南を低気圧が東へ進み、地表付近へ冷たい空気を引き込みました。このため、日立市役所では16日の19時から22時過ぎにかけて気温が3℃近く下がり、17日の朝にかけて気温は2.5℃前後で推移しました。また、山間部の本山では16日の19時過ぎから気温が1.5℃程下がり、17日の8時頃にかけて0.5℃から1.0℃前後で推移したため、16日の夜から17日の朝にかけて雪が降りました。奥日立きららの里では、17日朝の積雪が7cmになりました。9時過ぎころから気温は上がり出して雨に変わるとともに、昼前にかけて雨足がやや強くなったため雪は急速に融けました。
なお、水戸でも17日の0時過ぎと6時から8時頃にかけてて風向が北北東から北北西変わるとともに一時的に気温が2℃から0.5℃近くまで下がり、雪が降りました。特に、6時から8時過ぎにかけては比較的長い時間気温が低くなり、うっすらと雪が積もりました。これは、水戸地方気象台が1897年1月に観測を開始して以来、最も遅い積雪の記録です(これまでで最も遅かったのは、1965年4月11日です)。
●4月16日から17日にかけての気温の推移と市役所から見た17日朝の山の積雪(草付き斜面に積雪が残る)
月の終わりになるとシベリアで偏西風が南北に大きく蛇行し、上層の寒気が切離して寒冷渦となり、沿海州から日本海をゆっくりと東へ進みました。27日から28日にかけて、この寒冷渦の東側に南から湿った空気が入り、四国から関東地方の太平洋側の所々で強い雨が降りました。さらに、28日の関東地方では内陸部に残った冷たい空気と南から入ってきた暖かい空気との間に局地的な前線が形成されました(下図のアメダスによる風の分布図を参照)。この前線が朝から夕方にかけて停滞したことと前線ののびる方向と雨雲の移動方向が一致していたために同じ場所で雨が降り続き、茨城県から神奈川県にかけて帯状に降水量の多い地点が分布しました。特に、茨城県北部の沿岸部では南東の気流が山地の東斜面に当たる形になり、総降水量が200mm近い大雨になりました。
日立市内の総降水量の分布を見ても、多賀山地の南端に当たる南部支所では59.0mmの降水量でしたが、北部の十王交流センターでは175.5mmの降水量になり、3倍近くの差が生じました。雨雲の移動をレーダー図で見ると、朝のうちは東京都から埼玉県と千葉県の境にのびていた線状の雨雲は、北北東へ進みながら全体としてゆっくりと東へ移動していきました。この雨雲は12時から15時にかけて茨城県北部の山地に当たり、やや発達して強い雨を降らせました。その後雨雲は福島県へ進み、雨はいったん小止みになりました。しかし、夕方になって千葉県から北上してきた別の線状の雨雲が茨城県北部にかかると、再び発達して18時から20時にかけて強い雨が降りました。20時過ぎには雨雲は東へ抜け、雨は止みました。
●27日から28日の市内の降水量と十王交流センターにおける1時間降水量の推移
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●参考:4月27日から28日にかけての日立市周辺の総降水量分布と28日13時の降水量レーダー図
●参考:4月28日13時のアメダスによる雨と風の分布
●参考:4月28日15時の地上天気図と09時の500hPa面高層天気図
※500hPa面の高層天気図において、実線は等高度線を、点線は等温線を表しています。また、観測地点における上段の数値はその地点の500hPaの高さにおける気温を、下段の数値は同じ高さにおける気温と露点温度の差を表しています。
作成日 2010/05/13
名前 日立市天気相談所