OBSERVATION観測
◇暑い上旬から一転して下旬は涼しくなる
8月に引き続き、上旬は太平洋高気圧の勢力が強く晴れて暑い日が続きました。8日から9日にかけて台風第9号から変わった熱帯低気圧が本州中部を東へ進んだ後は太平洋高気圧の勢力がやや弱まり、北から時々冷たい空気が入るようになりました。下旬になると太平洋高気圧は南に後退し、本州付近に秋雨前線が停滞するようになりました。また、本州付近へ上層の気圧の谷が南下してきて寒気が入り、気温が低くなる時がありました。上旬の平均気温は26.4℃と平年より3.2℃高くなり、これまでで最も高くなりました。中旬の平均気温は22.9℃と上旬よりも3℃近く低くなりましたが、それでも平年よりは1.3℃高くなりました。しかし、下旬は中ごろに急激に気温が下がり、旬平均気温は18.8℃と平年より1.2℃低くなりました。この結果、月平均気温は22.7℃と平年より1.1℃高くなりました。
一方、夏型の気圧配置で上旬の降水量は少なくなりました。しかし、下旬になると秋雨前線や低気圧の影響で雨の降る日が多くなり、降水量は平年の3倍近くになりました。このため、月降水量は227.0mmと平年の115%になりました。また、上旬は晴れる日が続いて日照時間は平年の倍近くになりました。下旬になると秋雨前線の影響で平年を下回るようになりましたが、月の日照時間は177.6時間と平年をかなり上回り、9月の日照時間としては観測開始以来3番目に多くなりました。
9月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 22.7 21.6 月降水量(mm) 227.0 197.9 月日照時間(時間) 177.6 129.8
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 26.4 23.2 中旬 22.9 21.7 下旬 18.8 19.8
旬日照時間(時間) 旬 観測値 平年値 上旬 93.2 48.2 中旬 48.3 41.6 下旬 36.1 41.2
●9月の日立市役所における日平均気温とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移
●9月の日立市役所における日最高気温と日照時間の推移
※上記のグラフの元データ:エクセル2000ファイル(274KB)
気温の推移を詳しく見ると、上旬は上層の高気圧の中心が本州中部に位置し、地上では日本海に前線が停滞して南から南西の風が吹きやすい気圧配置となったため、下降流による昇温と南から南西の風によるフェーン現象による昇温が重なり気温が高くなりました。日立市役所では、台風第7号から変わった熱帯低気圧が日本海を進んだ2日、3日と、前線が日本海側から南下してきた7日、8日に連続して日最低気温が25℃以上(熱帯夜)となりました。 9月に日最低気温が連続して25℃以上となったのは、1952年9月に観測を開始して以来初めてのことです。また、9月の熱帯夜の日数4日も、観測開始以来最も多い記録でした。そして、8月の熱帯夜の日数11日と合わせて年間の熱帯夜の日数は15日となり、1994年の13日を抜いてこれまでで最も多くなりました。なお、水戸でも熱帯夜の日数が多くなりましたが、西側にある山地の影響受ける日立市役所の方が、水戸よりも日数は多くなりました。
7日は、南下してくる前線の南側に入って南西の風が強まり、日最高気温は35.4℃まで上がりました。これは、9月の最高気温としては観測開始以来3番目に高い記録でした。8日から9日にかけて、台風第9号から変わった熱帯低気圧が関東地方の南を東へ進むと、北から冷たい空気を引き込んで気温は下がりました。その後、太平洋高気圧は南へ後退して、上旬のような暑さは影をひそめました。日本海の前線に向かって南風が入り一時的に気温の上がる時はありましたが、最低気温が25℃を超えるようなことはありませんでした。
下旬になると、太平洋高気圧は完全に南へ後退し、本州南岸に秋雨前線が停滞するようになりました。。24日から25日かけては日本付近で上層の気圧の谷が深まるとともに、関東地方の東を台風第12号が北上し、北からの寒気を引き込む形となって一段と気温は低くなりました。21日は日本海から南下してくる前線に向かって南から暖かい空気が入り、最高気温は31.7℃まで上がりました。しかし、22日の昼過ぎから急激に気温が下がり出し、それ以降は最高気温が25℃を超えることはなく、日平均気温も20℃以下となって一気に秋が深まりました。
10月になって日最高気温が30℃を超えることがなければ、9月21日が真夏日終日となります。これは、平年(9月12日)に比べて9日遅いものです。また、9月の真夏日の日数は10日となって、1999年と並んで観測開始以来最も多くなりました。今年の8月は平均気温が高かった割に最高気温が高くならず、真夏日の日数もそれほど多くはなりませんでした。しかし、9月に入って真夏日の日数が多くなったため年間の真夏日の日数は40日となり、観測開始以来3番目に多い記録となりました。
●9月の気温と日照時間の記録
上旬平均気温
(℃)順位 年 気温 1 2010 26.4 2 1961 26.3 3 1956 25.6 4 1999 25.5 5 1994 25.3 平年値 23.2
月平均気温
(℃)順位 年 気温 1 1999 24.6 2 1961 24.0 3 2000 23.4 4 1954 23.3 11 2010 22.7 平年値 21.6
日最高気温
(℃)順位 年 月日 気温 1 2000 09/02 36.3 2 1999 09/01 36.1 3 2010 09/07 35.4 4 2004 09/14 34.4 5 1958 09/07 34.2
日照時間
(時間)順位 年 日照 1 1975 204.1 2 2003 180.0 3 2010 177.6 4 1992 174.1 5 2009 172.4 平年値 129.8 ※順位は数値の高い(多い)方からで、1953年から2010年の統計
※月平均気温の第11位には、2010年の他に1989年と1990年がある。
●熱帯夜の日数
日立市役所 順位 年 7月 8月 9月 年合計 1 2010 0 11 4 15 2 1994 1 12 0 13 3 1999 3 7 0 10 4 1973 1 9 0 10 5 2007 0 6 0 6 5 1971 1 5 0 6 平年値 0.3 1.7 0.2 2.2
水戸(金町) 順位 年 7月 8月 9月 年合計 1 2010 0 10 3 13 2 1999 5 3 0 8 3 1990 1 5 0 6 4 1994 1 4 0 5 4 1960 0 5 0 5 平年値 0.3 1.0 0.1 1.4 ※順位は、年合計の値の多い方からで1953年から2010年の統計
●真夏日の日数
9月の日数順 順位 年 7月 8月 9月 年合計 1 1999 12 23 10 47 1 2010 12 17 10 40 3 1687 3 10 7 20 3 1994 10 22 7 40 3 2005 6 14 7 30 年合計 0.7 5.6 10.6 19.8
年合計順 順位 年 年合計 1 1999 47 2 2000 45 3 2010 40 3 2004 40 3 1994 40 平年値 19.8 ※順位は日数の多い方からで、1953年から2010年の統計
●500hPa高度の緯度・時間断面図(東経135度線沿い、9月1日〜30日)
5880mの等高度線は、上旬には北緯40度近くまで広がりました。特に、上旬の前半は5940mの等高度線が出現し、太平洋高気圧の勢力が強かったことを示しています。月の後半は、5880の等高度線が消える時もあり、高気圧の勢力は南へ後退しました。
※網掛けの部分は、高度が5880m以上を表す。
●参考:9月3日09時と25日の21時の地上天気図と500hPa面高層天気図
3日は、500hPa面高層天気図における5940mの等高度線に見るように、日本付近は本州中部に中心を持つ上層の高気圧におおわれていました。地上天気図では日本海を熱帯低気圧が東へ進み、本州付近には南から暖かい空気が入って気温が上がりました。25日の高層天気図では、日本の東を北上する台風を取り込む形で気圧の谷が深まるとともに北からの寒気を引き込み、気温が下がりました。
作成日 2010/10/08
訂補日 2016/09/15
名前 日立市天気相談所