OBSERVATION観測
◇1986年以来の寒い1月
12月の終わりから日本付近で偏西風の蛇行が大きくなり、日本付近には断続的に強い寒気が入るとともに冬型の気圧配置が続きましたりました。このため、関東地方では晴れて乾燥した天気が続き、気温も低くなりました。日立市役所でも月平均気温が2.9℃と平年を1.7℃下回り、1986年の2.7℃以来25年ぶりに月平均気温が3℃未満となりました。また、冬型の気圧配置が続いて南岸低気圧による降水がなかったことから、月降水量は8.0mmと平年の16%しかありませんでした。一方、月の日照時間は227.3時間と平年比119%になり、1月の日照時間としては観測開始以来4番目に多くなりました。
1月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 2.9 4.6 月降水量(mm) 8.0 49.6 月日照時間(時間) 227.3 191.3
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 4.0 5.2 中旬 2.5 4.6 下旬 2.3 4.2
また、冬型の気圧配置が続いて北西の季節風が吹く日が多く降水量が少なかったことから、湿度が低くなりました。日最小湿度が40%未満となった日数は、3日、24日、29日を除いた29日となり、観測開始以来最も多くなりました。
●1月の最小湿度40%未満の日数と日照時間(日立市役所)
湿度40%未満の日数 順位 年 日数 1 2011 29 2 2010,1981,1966,1963 28 5 1997,1968,1955 27 9 1999 26 平年値
21.5
日照時間(時間) 順位 年 日照時間 1 1976 245.6 2 1974 237.4 3 1981 237.1 4 2011 227.3 5 1963 222.1 平年値
191.3 ※順位は数値の多い方からで、1953年から2011年の統計。
気温の推移をみると、つくばにおける上層500hPa(高度約5500m)の気温は月の初めに最も低くなった後、中旬の初めにかけて高くなっていきました。一方、地表に近い850hPa(高度約1500mm)面の気温は、気圧の谷が通過するたびに強い寒気が入り上下に変動することを繰り返しました。このため、地上の気温は月の半ばにかけてしだいに低くなっていきました。特に、16日はつくばの500hPaにおける09時の気温-36.3℃が示すように強い寒気が入ったことと前日の夜から朝にかけて雪が降ったことから、日平均気温は0.1℃とこの冬一番の低い気温となりました。
その後、下旬の前半にかけては冬型の気圧配置が緩み、寒気の流入が弱まって気温は平年並み近くまで戻りました。しかし、24日に低気圧が通過した後は再び寒気が入り、気温は下がりました。特に、31日にはつくばの500hPaにおける09時の気温が-36.7℃まで下がる強い寒気が入り、南部支所では最低気温-7.1℃を記録しました。これは、南部支所におけるこの冬の最低気温であるとともに、2000年4月1日の観測開始以来最も低い気温です。
日立市役所における最低気温の推移を見ると、月の初めは下層への寒気の流入が弱かったため(つくばにおける850hPaの気温の推移を参照)、最低気温は0℃を上回りました。しかし、4日に低気圧が関東地方の南を通過した後は下層へも寒気が入るようになり、最低気温が0℃未満となる日が続くようになりました。この結果、日最低気温が0℃未満(冬日)となった日数は23日となり、2006年以来5年ぶりに平年を上回りました。
●1月の平均気温と冬日の日数(日立市役所)
平均気温(℃) 順位 年 気温 1 1984 2.3 2 1985,1977 2.5 4 1981,1986 2.7 6 2011 2.9 平年値
4.6
冬日の日数 順位 年 日数 1 1986,1981,1963 26 4 1961 25 5 1990,1985,1977 24 8 2011,2006 23 平年値
16.6 ※順位は数値の低い方または多い方からで、1953年から2011年の統計。
●12月から1月にかけての日立市役所における日平均気温とつくばにおける850hPa気温(09時)の推移
※上のグラフの元データ:エクセル2000ファイル(87KB)
最初に述べたように、今年の1月は冬型の気圧配置が続いて低気圧による降水はありませんでした。しかし、偏西風の蛇行が大きく、寒気を伴った上層の低気圧が通過した15日から16日と23日から24日には北陸から関東地方に収束域が形成され、この収束域の北側に当たる茨城県を中心に雪が降りました。両日とも寒気におおわれていた中、夜に雪が降ったために積雪となりました。16日は、つくばにおける850hPaの気温が-10.3℃と非常に強い寒気が入っていたため、16日09時の日立市役所における積雪は7cmになりました。
一方、24日の場合には降水量は16日とほぼ同じでしたが、つくばにおける23日21時の850hPaの気温が-7.1℃と16日よりも寒気が弱かったため、24日08時の日立市役所における積雪は2cmと16日よりも少なくなりました。関東地方で積雪になりやすい南岸低気圧の場合には、関東地方南部ほど積雪が多くなります。しかし、今回のように上層の寒気による降雪の場合は、収束域の北側に入りやすい茨城県で積雪が多くなります。また、上層の寒気による積雪は過去にも何回か例がありますが、同じ月に2回もあるのはまれなことです。
●1月16日と24日の積雪の記録
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●1月16日と17日の積雪の様子
●参考:1月15日21時の地上天気図と500hPa面高層天気図
●参考:1月16日00時の気象衛星赤外画像と15日22時のアメダスによる風の分布
●参考:1月24日06時の地上天気図と09時の500hPa面高層天気図
●参考:1月24日00時の気象衛星赤外画像と02時のアメダスによる風の分布
作成日 2010/02/17
名前 日立市天気相談所