OBSERVATION観測
◇昨年に続き雪の多かった2月
月の前半は、低気圧が通過した後に冬型の気圧配置が強まることが多く、寒気が流入して気温が低くなりました。特に、月の初めは1月下旬から入っていた強い寒気の影響で気温が低くなりました。また、2月中旬の後半にも寒冷渦が南下してきて強い寒気が入り、気温が低くなりました。中旬と下旬の初めには、低気圧や前線の影響で天気がぐずつき冷え込みが弱まるときもありました。しかし、月の終わりには再び強い寒気が入り気温が低くなりました。この結果、月平均気温は3.6℃と平年より1℃低くなりました。一方、本州南岸を通過した低気圧や前線の影響を受けて日照時間は少なく、降水量は多くなりました。月の日照時間は162.0時間(平年比94%)と、平年より少なくなりました。そして、月降水量は74.0mm(平年比131%)と平年より多くなりました。
2月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 3.6 4.6 月降水量(mm) 74.0 56.3 月日照時間(時間) 162.0 172.1
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 3.5 4.2 中旬 2.9 4.6 下旬 4.4 5.1
●2月の日立市役所における日平均気温とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移
この冬は、2011年12月半ばから2月初めにかけて日本付近で偏西風の蛇行が強まり、寒気が南下してきて気温の低い日が続きました。その後、低気圧が本州付近を通過するようになリ、南から暖気が北上してくるときがありました。しかし、低気圧の通過後は強い寒気が入り、気温が下がりました。このため、12月から2月にかけての平均気温は4.1℃と平年より1.3℃低くなりました。これは日立市役所観測開始以来、1984年の2.9℃、1986年の3.5℃に次いで3番目に低い気温でした。また、暖気の入るときがあったことから、2月の日最低気温0℃未満の日(冬日)の日数は15日とほぼ平年並みでした。しかし、12月から2月にかけての冬季の日数は46日と平年より10日近く多くなり、最近5年間では最も多くなりました。
1月と2月の500hPa高度偏差図を比べてみると、日本付近の気圧配置には違いが見られます。1月、2月ともアムール川下流からオホーツク海に低気圧があり、日本付近では偏西風が南へ大きくj蛇行しています。ただ、2月の場合は日本の南で上層の高気圧が強まり、日本付近で等高度線が密になっています。このため、2月は低気圧が本州付近を通過しやすくなるとともに、上層を中心に時々南から暖気が入ることがあり、平均気温が低かった割には冬日の日数は少なくなりました。
なお、地表付近の気圧配置は高気圧が北から張り出すことが多く、天気をぐずつかせるとともに地表付近に冷たい空気が入りやすくなりました。このため、低気圧の通過時に雪の降ることが多くなり、2月の雪日数は7日となりました。このうち、市役所では17日に最深積雪8cm、29日に最深積雪3cmと、1cm以上の積雪記録した日が2回ありました。
冬の平均気温(℃) 順位 年 平均気温 1 1984 2.9 2 1986 3.5 3 2012 4.1 4 1975 4.2 5 1974 4.3 5 1981 4.3 平年値
5.5
この冬の最低気温 順位 最低
気温日 時刻 1 -4.4 02/19 02:00 2 -4.2 02/18 23:54 3 -4.2 01/29 07:01 4 -4.1 01/30 06:32 5 -3.8 02/28 05:53
最近の冬日の日数 年 前年12月 1月 2月 計 2008 1 16 22 39 2009 5 13 6 24 2010 6 13 16 35 2011 1 23 10 34 2012 11 20 15 46 平年値 5.8 16.6 14.3 36.6 ※冬の平均気温は、前年の12月から当年2月までの平均。また、順位は数値の低い方から。
●2月の降雪の状況(日立市役所)
日 時間 最深積雪
(cm)降水量
(mm)気象状況 01 15:40〜16:48 - 0.0 日本海低気圧からのびる寒冷前線
(前線通過時に、にわか雪が降る)08 19:20〜19:35
20:10〜20:40- 0.0 上層の寒気(20時前は、みぞれ) 10 16:18〜16:25 - 0.0 上層の気圧の谷(16:25〜17:00は雨) 16 22:40〜翌日 *** 0.5 上層の気圧の谷と収束域
(最深積雪は17日08時の値)
(奥日立きららの里の積雪は5cm)17 前日〜04:10
08:35〜09:408 2.0 18 01:30〜03:05 - 0.0 上層の気圧の谷 29 04:40〜16:35 3 10.0 南岸低気圧(16:00〜16:35はみぞれ、16:35〜17:50は雨)
(奥日立きららの里の積雪は20cm)※16日から17日は降雪時間帯が夜間のため最深積雪は観測していません。表の値は、8時の積雪深です。
●12月から2月にかけての日立市役所における日平均気温の推移
※上のグラフの元データ:エクセル2000ファイル(1202temp.xls、131KB)
●参考:1月と2月の月平均500hPa高度・偏差図
※実線は等高度線、点線は等偏差値線、陰影域は負偏差を表す。
◇17日と29日の雪の降り方の違い
16日から17日と29日では雪の降り方が異なっていました。16日の場合は、上層に強い寒気を伴った寒冷渦が日本海を進んだ影響で関東地方南部に収束域が形成され、その北側に雪雲が広がって茨城県から千葉県にかけて雪が降りました。つくばにおける高層観測の結果をみると、850hPa面(高度約1500m)の気温は16日21時には-6.9℃まで下がり、強い寒気が入ったことを示しています。
日立市では、16日の23時前から雪が降り始めるとともに気温が一気に2℃近く下がり、24時前には氷点下の気温となりました。降水量は2.5mmと少なかったですが、気温が低かったため積雪が進み18日朝の日立市役所における積雪は8cmになりました。山間部にある奥日立きららの里の積雪は約5cmで、沿岸部より降水量が少なかったため積雪も少なくなりました。
29日の場合、関東地方には26日に入った寒気の残りが地表付近に寒気が滞留していました。つくばにおける高層観測の結果をみると、29日09時の気温は850hPa面(高度約1500m)で-2.7℃、925hPa面(高度約750m)で-3.3℃と地表付近の方が気温が低くなっていました。この中を、関東地方の南に低気圧が発生して東北東へ進んだため、未明から夕方にかけて雪が降り続きました。最深積雪は前橋市で17cm、宇都宮市で16cm、熊谷市で10cmなど内陸部を中心に広い範囲で大雪となりました。また、東京都心でも2cmの積雪を記録しました。
日立市役所では、雪が降り出した29日の4時30分頃から気温が一気に2℃近く下がり、15時過ぎにかけて0.5℃前後で推移しました。ただし、上空の気温が比較的高かったことから、17日に比べて降水量は多くなったものの積雪は多くなりませんでした。10時には最深積雪3?を記録しましたが、その後は水分を含んだ雪に変わっていき、積雪は増えませんでした。そして、16時頃からは雨が混ざり始め、16時30分過ぎには完全に雨に変わりました。なお、本山では4時過ぎから13時にかけて、-1℃前後の気温で推移しました。このため、奥日立きららの里では16時の積雪が約20cmになり、2月17日の積雪5cmに比べてかなり多くなりました。
●16日から17日の気温の推移(10分間毎)と16日24時のアメダスによる気温の分布
※上のグラフの元データ:120217da.xls(エクセル2000ファイル、444KB)
●2月16日21時の地上天気図と850hPa面高層天気図
●28日から29日の気温の推移(10分間毎)と29日06時のアメダスによる気温の分布
※上のグラフの元データ:120229da.xls(エクセル2000ファイル、434KB)
●2月29日09時の地上天気図と850hPa面高層天気図
作成日 2012/03/21
訂補日:2013/11/21
名前 日立市天気相談所