OBSERVATION観測
◇後半、晴れて暑い日が続く
上旬は、台風第9号、第10号、第11号が相次いで日本の南海上を西へ進みました。また、偏西風が南へ大きく蛇行し、一時的に寒気が入ることがありました。このため、旬平均気温は平年並みになりました。中旬に入ると、太平洋高気圧が日本付近へ張り出してくるようになり気温が高くなりました。ただ、高気圧の縁を回って南から暖かく湿った空気が流れ込みやすかったため大気の状態が不安定となり、にわか雨の降る日が多くなりました。
15日に低気圧が日本海を東へ進んだ後、太平洋高気圧の北への張り出しが強まりました。さらに、下旬になると上層の高気圧の中心が本州付近に位置するようになり、晴れて気温の高い日が続きました。この結果、月平均気温は26.3℃と平年より1.4℃高くなりました。一方、月の日照時間は後半に晴れの日が続いたことから275.9時間と平年の160%になり、8月の日照時間としては日立市役所観測開始以来3番目に多い記録となりました。反対に、月降水量は17日から31日にかけて雨が降らなかったため、30.5mmと平年の21%しかありませんでした。これは、8月の降水量としては4番目に少ない記録でした。
8月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 26.3 24.9 月降水量(mm) 30.5 145.6 月日照時間(時間) 275.9 172.7
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 25.3 25.2 中旬 26.5 24.9 下旬 27.1 24.7
旬日照時間(時間) 旬 観測値 平年値 上旬 97.6 60.6 中旬 60.3 54.3 下旬 118.0 57.9 ●8月の日照時間と降水量の記録
月日照時間(時間) 順位 年 日照時間 1 1978 289.2 2 1985 284.6 3 2012 275.9 4 1975 256.2 5 1965 245.7 平年値 172.7
月降水量(mm) 順位 年 降水量 1 1984 3.0 2 2010 7.5 3 1996 26.0 4 2012 30.5 5 1992 35.0 平年値
145.6 ※順位は数値の多い方または少ない方からで、1953年から2012年の統計
●8月の日立市役所における日最高気温の推移と風向頻度
※上のグラフの元データ:1208data.xls(エクセル2000ファイル、113KB)
今年の夏(6月から8月)の気温の変化をみると、下図の日平均気温の推移グラフに示すようになっています。6月はオホーツク海高気圧や寒冷渦の影響で気温が低くなりました。7月に入ると本州付近で太平洋高気圧が強まり、気温は高くなりました。ただし、下旬の初めには寒冷渦が南下してきて一時的に気温が低くなる時がありました。8月の上旬にも寒冷渦の影響で一時的に気温の低いときがありました。しかし、最初に述べたように、15日に低気圧が日本海を東へ進んだ後、太平洋高気圧が強まり本州付近をおおうようになりました。そして、月の終わりにかけて上層の高気圧の中心が本州付近に移動し、晴れて気温の高い日が続きました。
このため、日立市役所における旬別平均気温を比べてみると、下旬の平均気温が27.1℃と最も高くなりました。これは、日立市役所観測開始以来一番高い記録で、猛暑と言われた2010年8月下旬の平均気温27.0℃を0.1℃上回りました。また、日立市役所では20日から31日にかけて連続12日間、最高気温が30℃を超えました。このため、真夏日(日最高気温の30℃以上の日)の日数も2010年8月と同じ17日になりました。ただ、2010年に比べ上層の高気圧の中心がやや南にあり、高気圧下の下降流による気温の上昇がなかったため、熱帯夜(日最低気温25℃以上の日)の日数は2010年の11日に対して3日と少なくなりました。なお、南から高気圧におおわれることが多かったことから、日立市役所における風向頻度を見ると南から西南西の間の風向が50%と平年の2倍近くありました。
●8月下旬の平均気温(℃)の記録と夏の真夏日及び熱帯夜の日数
下旬平均気温 順位 年 気温 1 2012 27.1 2 2010 27.0 3 2000 26.6 3 1995 26.6 5 1990 29.9 平年値 24.7
真夏日の日数 月 2012年 2011年 2010年 平年値 6月 0 4 1 0.8 7月 11 10 12 6.5 8月 17 10 17 11.4 計 28 24 30 18.8
熱帯夜の日数 月 2012年 2011年 2010年 平年値 6月 0 0 0 0.0 7月 3 1 0 0.3 8月 3 5 11 1.9 計 6 6 11 2.2 ※順位は数値の高い方からで、1953年から2012年の統計
●6月から8月の日立市役所における日平均気温の推移(2011年と2010年の比較)
気温が低かった8月8日と気温の高い日が続いた下旬の中から23日の天気図を比べてみると、太平洋高気圧の張り出し方と偏西風の流れに大きな違いのあることが分かります。8日の500hPa面高層天気図をみると、5880mの等高度線で囲まれた高気圧は日本海西部と日本の南にわずかに見られるだけで、かわりに三陸沖には上層に寒気を伴った低気圧(寒冷渦)があります。この寒冷渦に伴う寒気が北東の風とともに地表へも入り、日立市では8日、9日と晴れたにもかかわらず最高気温が26℃近くまでしか上がりませんでした。
一方、23日の500hPa面高層天気図をみると、5880mの等高度線で示される太平洋高気圧は東から本州付近へ張り出し、東北地方の東には5940mの閉じた等高度線で示される高気圧の中心があります。そして、オホーツク海から黄海にかけては上層の気圧の谷となっています。この気圧の谷に向かって南から暖かい空気が入り、関東地方を中心に気温が高くなりました。23日の日立市役所は終日晴れて南寄りの風が吹き、最高気温は30.4℃を記録しました。この後、上層の高気圧は中心を徐々に西へ移して、東日本から西日本をおおうようになったため、月末にかけて全国的に気温が高くなりました。
今年は偏西風が南北に大きく蛇行しやすく、時々寒気が南下してきて気温の低くなる時がありました。8月後半の気温が高い状態が続いた時も、2010年8月とは異なり中国大陸では偏西風が南へ蛇行して気圧の谷場となっていました。それとは逆に日本付近は気圧の尾根となり、この気圧配置がなかなか崩れなかったため気温の高い日が続きました。また、上層の高気圧の中心に近かった東日本では晴れの天気が続き降水量が少なくなりました。一方、西日本では高気圧の西縁に沿って湿った空気が流れ込み、局地的に大雨となった所もありました。気象庁の8月降水量地域平年比の図を見ると、東北地方から関東地方にかけては平年の降水量の20〜70%と少なくなったのに対して、西日本では70〜120%の降水量となりました。
●参考:8月の全国の降水量の平年比分布
※気象庁の「2012年8月の天候」から
●参考:2012年8月8日の09時の地上天気図と500hPa面高層天気図
●参考:2012年8月23日09時の地上天気図と500hPa面高層天気図
作成日 2012/09/12
名前 日立市天気相談所