OBSERVATION観測
◇二つの台風が寒気を引き込む
上旬から中旬にかけて、太平洋高気圧が日本の南海上で勢力を西へ伸ばし、本州付近は暖かい空気におおわれました。このため、本州南岸に前線が停滞した上旬後半と台風第18号の通過後に一時的に寒気が入った17日から19日を除いて、気温は平年より高く推移しました。26日に台風第20号が関東地方の南を東へ進んだ後、強い寒気が南下してきたため月の終わりは一時的に気温が低くなりました。この結果、月平均気温は22.5℃と平年より0.7℃高くなりました。
日照時間は、本州南岸に停滞した前線の影響で上旬は平年より少なくなりました。しかし、中旬から下旬にかけては高気圧におおわれて晴れる日が続いたことから、月の日照時間は187.2時間と平年の139%になりました。これは、9月の日照時間としては日立市役所観測開始以来3番目に多い記録です。なお、2011年と2012年も日照時間が多く、近年は秋の長雨のない年が続いています。一方、月の降水量は111.0mm(平年比62%)と平年より少なくなりました。
9月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 22.5 21.8 月降水量(mm) 111.0 178.8 月日照時間(時間) 187.2 134.3
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 24.0 23.6 中旬 22.9 21.9 下旬 20.5 19.8
旬日照時間(時間) 旬 観測値 平年値 上旬 43.8 49.9 中旬 74.8 42.8 下旬 68.6 41.6
日照時間の記録 順位 年 日照時間 1 1975 204.1 2 2011 191.6 3 2013 187.2 4 2012 186.5 5 2003 180.0
●9月の日立市役所における日平均気温とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移
●9月の日立市役所における日最高気温と日照時間の推移
※上のグラフの元データ:1309data.xls(エクセル2000ファイル、252KB)
このように、今年の9月は平年よりも気温が高い日が多かったものの、太平洋高気圧の張り出しの軸は日本の南海上にあったため気温が極端に高くなることはなく、最高気温が30℃以上となった真夏日は9月1日の31.6℃しかありませんでした。この後、10月に真夏日となる日がなければ、9月1日が真夏日終日となります。これは平年よりも12日、昨年よりも1か月早く、2009年の8月29日以来の早い記録となります。
→10月20日追記;10月12日に寒冷前線の通過に伴うフェーン現象により、最高気温30.1℃を観測しました。これは、1999年と並んで観測開始以来最も遅い真夏日となりました。
また、16日に台風第18号が本州を縦断した後、北から下層へ寒気が入っくるとともに西から移動性高気圧が進んできました。このため、17日の朝は冷え込みが強まり、西日本から東日本では10月中旬並みの気温となりました。日立市役所でも05時33分に日最低気温13.8℃を記録し、今年の秋になって初めて気温が15℃を下回りました。これは平年よりも9日早く、2004年の9月16日以来の早い記録です。
さらに、26日に台風第20号が関東地方の南から日本の東へ進んだ後、一時的に上層から下層にかけて強い寒気が入りました。このため、27日の朝は内陸部を中心に冷え込みが強まり北海道では氷点下の気温となった所がありました。日立市役所でも04時16分に日最低気温12.3℃を記録し、この秋いちばんの冷え込みとなりました。
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※最低気温15℃未満初日は、その年の8月1日以降に日最低気温が初めて15℃未満となった日。
※10月12日に最高気温30.1℃を観測したため、真夏日終日は遅くなります。
●参考:9月12日と17日及び27日09時の地上天気図と500hPa面高層天気図
今年の夏の気温の推移をみると、7月前半は太平洋高気圧が勢力を強めて関東地方以西をおおい、晴れて暑い日が続きました。7月後半になるとオホーツク海高気圧が北日本から東日本へ張り出し、冷たい北東の風が入り気温が低くなりました。しかし、8月上旬後半から中旬にかけては日本の南で太平洋高気圧が強まり、再び晴れて暑い日が続くようになりました。
8月の終わりから9月にかけては、時々寒気が入り気温の低くなる時がありました。しかし、太平洋高気圧が日本の南を西へ張り出して暖かい空気におおわれることが多かったため、平年より気温の高い日が多くなりました。今年は、例年よりも早く7月上旬には晴れて暑い日が続くようになりました。しかし、その後はオホーツク海高気圧の張り出しや一時的な寒気の南下があり、気温の変動が大きくなりました。
●6月から9月の日立市役所における日平均気温の推移
◇台風第18号が関東地方を縦断
日本の南海上を北上してきた台風第18号は15日昼過ぎに北緯30度線を越えた後、向きを北東へ変えて紀伊半島の南を通り、16日7時過ぎに愛知県豊橋市付近に上陸しました。その後、関東地方西部から東北地方を縦断して16日の夕方には三陸沖へ進みました。15日は太平洋高気圧の縁を回る湿った空気が台風の東側を北上して関東地方へ流れ込み、内陸部に滞留していた冷気との間で局地的な前線が作られたため、栃木県から神奈川県にかけて帯状に雨雲が発達しました。このため、神奈川県から東京都にかけては15日の降水量が180mm近くになりました。関東地方における日降水量の多い方からの記録は、東京都八王子で180.0mm、神奈川県海老名で178.0mm、同じく平塚で172.5mmとなっています(下の15日09時のアメダスによる降水量と風の分布図及び降水レーダー図を参照)。
これに対して、日立市は前線の東側に入り大雨にはなりませんでした。しかし、時々湿った空気に伴う小さな雨雲がかかり、断続的に強い雨が降りました。日立市役所では、15日08時25分〜35分に5mm、11時00分〜30分に19mm、13時05分〜25分に9mm、23時00分〜30分に15mmと4回にわたり強い雨が降りました。湿った空気は午後には東北地方へ抜け、関東地方では昼頃から夜の初めにかけて晴れました。
16日は、台風が近づいてくるとともに台風を取り巻く雨雲が昼前から関東地方にもかかってきました。しかし、上陸とともに台風の勢力は弱まり、台風の東側から南側では雨雲が消えていきました。このため、台風の東側に入った日立市では雨はほとんど降らず、日立市役所における16日の降水量は5.5mmでした。また、日立市では風もそれほど強まりませんでした。日立市役所では、7時頃から南寄りの風が強まり、昼過ぎにかけて平均風速5〜6m/sの風が吹きました。台風から南へのびる雨雲が通過した13時30分過ぎに一時的に風が強まり、最大平均風速9.2m/s、最大瞬間風速21.0m/sを記録しました。しかし、14時過ぎには風向が西へ変わるとともに風も急速に弱まりました。その後、台風が三陸沖まで進んだ夕方には晴れ間も広がってきました。なお、日立市役所における気圧の推移グラフをみると、13時29分に最低気圧988.0hPaを記録しており、台風はこの時間に最も日立市の近くを通過したものと思われます。
一方、関東地方南部では台風へ向かって吹き込む南風が地形の影響で強まり、東京湾周辺を中心に平均風速で20m/sを超える強い風が吹きました。日最大風速は、東京都江戸川臨海で24.5m/s、東京都羽田空港で22.4m/sを観測しました。日最大瞬間風速では、東京都八王子で34.5m/s、東京都江戸川臨海で33.7m/sを観測するなど風速が30m/sを超える所がありました。
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※16日の日立市役所と日立会瀬の1時間最大降水量は、15日23時00分〜30分に降った雨の記録です。
●日立市役所における気象観測記録(9月16日)
最大風速(m/s) | 最大瞬間風速(m/s) | 海面気圧(hPa) | |||||
風速 | 同風向 | 同時刻 | 風速 | 同風向 | 同時刻 | 最低気圧 | 同時刻 |
9.8 | 南西 | 13:39 | 21.0 | 南西 | 13:33 | 988.0 | 13:29 |
●9月16日の風速と風向の推移(日立市役所)
●9月16日の日立市役所における気圧の推移と16日13時のアメダスによる風の分布
●9月15日09時のアメダスによる風と降水量の分布
関東地方では、台風が接近する前の15日に南から湿った空気が流れ込み、栃木県から神奈川県にかけて大雨となった。
●参考:9月15日09時00分と16日09時00分の降水レーダー図
●参考:降水レーダー図に見る台風第18号を取り巻く雨雲の変化
上陸後、台風を取り巻く雨雲は東側から南側では急速に消えていった。
●参考:台風第18号の経路図
●参考:9月15日と16日09時の地上天気図と気象衛星可視画像
作成日 2013/10/09
訂補日:2013/10/20
名前 日立市天気相談所