OBSERVATION観測
◇上旬と下旬に天気がぐずつく
日本の東海上で太平洋高気圧の勢力が強く、偏西風も平年に比べて北寄りに流 れたため、南から暖かい空気が入り気温は高くなりました。特に、上旬は太平洋高気圧の中心が関東地方の南に位置したことと、低気圧や台風が日本海を進んだことから気温が上がりました。月の後半になると、日本の西側に上層の気圧の谷が位置するようになるとともに地上の高気圧の張り出しが北に偏ることが多くなり、気温は平年並みまで下がりました。この結果、月平均気温は18.0℃と平年より1.2℃高くなりました。これは、10月の気温としては日立市役所観測開始以来6番目に高い気温です。
また、上層の気圧の谷が西に位置して湿った空気が入りやすかったことから曇りや雨の日が多くなり、月の日照時間は125.3時間(平年比83%)と平年より少なくなりました。一方、月の降水量は15〜16日にかけて関東地方の東を北上した台風第26号の影響で100mm近い降水量があったことから、269.0mmと平年の1.5倍近い降水量となりました。
10月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 18.0 16.8 月降水量(mm) 269.0 173.3 月日照時間(時間) 125.3 151.2
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 21.2 18.4 中旬 17.8 17.0 下旬 15.2 15.0
旬日照時間(時間) 旬 観測値 平年値 上旬 30.6 43.0 中旬 50.2 49.1 下旬 44.5 59.1
●10月の日立市役所における日平均気温の推移とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移
●10月の日立市役所における日照時間の推移と風向頻度分布
今年の10月は太平洋高気圧の勢力が強く偏西風も日本の北を流れていたことから、台風は日本の南海上を西から北西へ進みました。そして、太平洋高気圧の勢力が一時的に東へ後退すると、その縁を回るようにして向きを北から北東へ変え、日本付近へ影響することが多くありました。また、上層の気圧の谷が中国大陸で停滞したため、日本付近では高気圧の張り出しが北に偏ることが多くなりました。このため、日立市では例年以上に北東の風の吹くことが多く、北から東北東の風の割合は平年の39.4%に対して58.1%と1.5倍近くになりました(上の風配図を参照)。
この北東の風と気圧の谷前面の南西流に沿って台風から流れ込む湿った空気の影響で、関東地方では曇りや雨の日の続く時がありました。日立市では、台風第22号と第23号の影響で1日から6日にかけて、また19日から26日にかけては台風第27号の影響で天気がぐずつきました(下の気象衛星画像を参照)。
●参考:10月4日09時の地上天気図と11時の気象衛星可視画像
●参考:10月25日09時の地上天気図と11時の気象衛星可視画像
気温の推移をみると、最初に述べたように月の前半は気温の高い日が続きました。特に、7日〜13日にかけては本州の南で上層の高気圧が強まるとともに日本海を進む低気圧に向かって南から暖かい空気が流れ込んだため気温が上がりました。特に、関東地方では11日から12日にかけて日本海を北東へ進んだ低気圧から南西へのびる前線が本州上を東へ進んだことに伴い、前線の通過前は南西の風が、通過後は西の風が吹いてフェーン現象が起き気温が上がりました。11日の関東地方における最高気温は、東京都八王子で31.5℃を記録するなど12地点で最高気温が30℃を超えました。また、12日の関東地方における最高気温は群馬県館林で32.3℃、茨城県古河市と神奈川県海老名市で32.2℃を記録するなど42地点で最高気温が30℃を超え、さらに気温が高くなりました。
日立市役所では、11日の12時過ぎから西南西の風がやや強く吹き始めて気温が急に上がり、13時44分には日最高気温29.4℃を記録しました。その後も、12日の未明にかけて西南西の風が吹き続けたため、11日の夜はあまり気温が下がりませんでした。12日の4時過ぎから東寄りの風に変わると、気温は一時的に20℃近くまで下がりました。しかし、下層へ入った暖気の影響で日の出とともに気温は再び上がり出し、10時過ぎには気温が28℃を超えました。さらに、11時になると風向が西南西に変わったため一段と気温は上がり、11時50分には最高気温30..1℃を記録しました。その後、12時には風向が北東に変わり気温は一気に4℃近く下がりました。14時を過ぎると北東の風がやや強く吹き始めて冷たい空気が入ってきたため、さらに気温は下がっていきました。なお、水戸では日立市役所よりも北東の風に変わるのが遅れ、14時過ぎから気温が低くなりました。また、古河では明瞭な気温の低下は見られませんでした。
12日の最高気温30.1℃は、10月の気温としては日立市役所観測開始以来6番目に高い気温でした。また、その年に最高気温が30℃以上となった最後の日(真夏日終日)の記録としてみると、10月12日は1999年10月12日と並んで日立市約観測開始以来最も遅い日となりました。なお、県内15か所の観測点の内、水戸、つくば、鉾田、、土浦、龍ヶ崎でも最も遅い真夏日の記録を更新しました。
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※順位は数値の高い方及び日付の遅い方から(1953年〜2013年の統計)。
●10月12日の気温と風向の推移及び11時のアメダスによる気温と風の分布
●参考:10月12日12時の地上天気図と09時の850hPa面高層天気図
◇台風第26号が関東地方の東を北上し、強い風が吹く
13日から15日の朝にかけて日本の南海上を北北西へ進んできた台風第26号は、中国大陸から東進してきた上層の気圧の谷に引き込まれる形で15日の昼には北東へ向きを変えました。その後、しだいに速度を上げて16日の明け方には八丈島の北を通過し、鹿島灘を北上して昼には三陸沖へ進みました。台風と中国大陸から張り出す高気圧との間で気圧傾度が大きくなったため、関東地方では南部を中心に15日の夜から16日の昼過ぎにかけて平均風速で20m/sを超える北東から北西の強い風が吹きました。関東地方における16日の最大風速は、千葉県銚子市で33.5m/s、成田市で23.5m/s、東京都羽田空港で22.9m/sでした。また、日最大瞬間風速は千葉県銚子市で46.1m/s、館山市で38.5m/s、神奈川県三浦市で37.0m/sなど広い範囲で風速が30m/sを超えました。
日立市役所における風速の推移をみると、15日18時頃から北東の風が強くなり始め、16日0時過ぎには平均風速が10m/sを超えるようになりました。その後も風は徐々に強くなり、06時09分には最大平均風速16.0m/sの北北東の風を記録しました。8時になると風向が北西に変わり、風は少し弱まりました。しかし、9時を過ぎると吹き返しの北西の風が強まり、一時的に平均風速が15m/sを超えました。日最大瞬間風速27.7m/sの北西の風は、この吹き返しの時間帯の09時34分に記録しました。上層の気圧の谷が近づいてきた影響で昼前には風向が東寄りに変わるとともに、風は急速に弱まりました。
●10月16日の風と気圧の記録
地点 | 最大風速(m/s) | 最大瞬間風速(m/s) | 海面気圧(hPa) | |||||
風速 | 同風向 | 同時刻 | 風速 | 同風向 | 同時刻 | 最低気圧 | 同時刻 | |
日立市役所 | 16.0 | 北北東 | 06:09 | 27.7 | 北西 | 09:34 | 972.5 | 09:12 |
南部支所 | 14.7 | 北東 | 06:30 | 33.0 | 北北西 | 09:05 | - | - |
水戸(金町) | 17.4 | 北北東 | 05:28 | 26.7 | 北北東 | 05:24 | 974.0 | 07:57 |
●日立市役所における最大風速(m/s)の記録
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※最大平均風速は1979年2月1日以降の統計。
また、今回の台風は進行方向の北側に雨雲が広がっていたため、関東地方では台風が日本のはるか南に離れていた15日の朝から弱い雨が降り出しました。そして、台風が北緯30度線を越えた15日夕方からは、雨は徐々に強く降るようになりました。特に、16日の未明から朝にかけては茨城県南部から千葉県、伊豆大島にかけて局地的な前線が形成され(下のアメダスによる風の分布図参照)、この地域で雨量が多くなりました。茨城県南部では、総降水量が400mm近くになりました(行方市北浦庁舎で総降水量389mm、鹿嶋で総降水量362.5mm)。日立市は前線の北側に入ったため、強い雨の降ることはありませんでした。15日の夜から16日の朝にかけて1時間に10〜20mmの雨が降り続き、市内の総降水量は101.5〜148.0mmでした。
今回の台風は、北上に合わせるように上層の気圧の谷が西から進んできたため、偏西風の影響を受けて北東へ転向後は急速に加速していきました。茨城県の東を北上した16日09時には進行速度が70k.m/hに達しました。また、気圧の谷の西側から高気圧が張り出してきたことから台風との間で気圧傾度が大きくなり、直接の影響を受けた関東地方だけでなく北海道から九州地方にかけての広い範囲で強い風が吹きました。16日の最大風速の記録の第1位は宮城県女川町江の島の33.6m/s、第3位は北海道根室市納沙布の25.1m/sでした。
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総降水量 |
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日時 | ||
日立市役所 | 101.5 | 12.0 | 16日04時23分 |
北部消防署 | 138.5 | 17.0 | 16日06時00分 |
本山 | 140.0 | 19.0 | 16日06時00分 |
西部出張所 | 106.5 | 16.0 | 16日07時00分 |
諏訪広場 | 137.0 | 18.0 | 16日06時00分 |
南部支所 | 110.0 | 12.0 | 15日22時00分 |
十王交流センター | 148.0 | 19.0 | 16日07時00分 |
日立会瀬 | 139.0 | 19.0 | 16日06時36分 |
水戸(金町) | 140.0 | 18.0 | 16日04時08分 |
※総降水量は、15日15時〜16日10時までの合計。
●10月15日〜16日の風速と風向の推移(日立市役所)
●10月15日〜16日の海面気圧の推移(日立市役所)と1時間降水量の推移(十王交流センター)
※上の二つのグラフの元データ:131016da.xls(エクセル2000ファイル、799KB)
●参考:10月16日05時のアメダスによる降水量の分布と04時30分の降水レーダー図
●参考:10月16日05時と09時のアメダスによる風の分布
05時のアメダスでは房総半島に東風と北風の収束域が見られ、この領域に沿って雨量が多くなっています。09時になると関東地方全域で北西の風に変わるとともに、風が強まっています。
●参考:台風第26号の経路図
●参考:10月15日と16日09時の気象衛星可視画像
●参考:10月15日と16日09時の地上天気図
●参考:2013年10月15日と16日09時の500hPa面高層天気図
台風第26号は、西から進んできた上層の気圧の谷の前面に引き込まれる形で、関東地方の東海上を加速しながら北上しました。16日09時の実況では、北東へ70km/hの速さで進みました。
作成日 2013/11/07
名前 日立市天気相談所