OBSERVATION観測
◇月後半、急速に暖かくなる
月を通して日本付近を低気圧と高気圧が交互に通過し、天気は周期的に変わりました。2月は日本付近で偏西風の蛇行が大きくなり、寒気が南下してきて気温が低くなりました。2月の終わりには偏西風の蛇行が解消し、南から暖かい空気におおわれるようになりました。しかし、3月に入ると再び偏西風の蛇行が強まり、下層を中心い強い寒気が入ってきました。このため、上旬の平均気温は4.1℃と平年より1.8℃低くなりました。中旬以降は偏西風が西から東へ流れるようになり、気温は平年並みに戻ってきました。特に、下旬は南から高気圧におおわれるようになり気温が上がりました。下旬の平均気温は11.3℃と平年より3.1℃高く(3月下旬の平均気温としては観測開始以来2番目に高い)、上旬の平均気温よりも7℃近く上がりました。この結果、月平均気温は7.9℃と平年より0.7℃高くなりました。
一方、例年のように本州南岸に前線が停滞することはなく、高気圧が周期的に通過したことから晴れる日が多くなり、月の日照時間は217.9時間(平年比122%)と平年よりかなり多くなりました。これは、3月の日照時間としては観測開始以来5番目に多い記録です。また、低気圧が日本付近で発達することがあったため、月降水量は123.0mmと平年の114%になりました。
3月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 7.9 7.2 月降水量(mm) 123.0 107.5 月日照時間(時間) 217.9 178.8
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 4.1 5.9 中旬 8.1 7.3 下旬 11.3 8.2
旬日照時間(時間) 旬 観測値 平年値 上旬 63.3 57.2 中旬 64.8 60.9 下旬 89.8 60.7
●3月の日立市役所における日平均気温の推移とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移
●3月の気温と日照時間の記録
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※順位は数値の高い方からで、1953年から2014年の統計。
◇偏西風の変化
上層の偏西風の流れを見ると、上旬から下旬にかけて流れ方が大きく変化しました。上旬は、ベーリング海で停滞していた上層の高気圧(ブロッキング高気圧)がゆっくりと西へ移動してきたため、オホーツク海からサハリン付近に寒冷渦が停滞し、日本付近で偏西風が南へ大きく蛇行しました(下の500hPa面高層点図を参照)。このため、北から日本付近へ強い寒気が南下し気温が低くなりました。つくばにおける高層観測によると、10日21時の500hPaの気温は-36.6℃まで下がり平年より13℃近く低くなりました。この寒気の影響で、日立市役所では1日から10日にかけて、5日を除いて最高気温が10℃未満の真冬並みの寒い日が続きました。
中旬に入るとブロッキング高気圧はシベリア付近で弱まり、日本付近では偏西風の南への蛇行は小さくなりました。そして、15日に上層の気圧の谷が日本付近を通過した後、寒冷渦がカムチャッカ半島付近へ離れていったため、日本付近では偏西風が西から東へ流れるようになりました。さらに、21日に本州南岸を低気圧が発達しながら北東へ進んだ後、本州付近は南から高気圧におおわれるようになり、下層へ暖かい空気が入ってきて気温が高くなりました。日立市役所では24日以降、雨の降った27日を除いて最高気温が15℃以上の暖かい日が続きました。
●3月10日と25日12時のアメダスによる気温の分布
●3月10日と25日09時の天気図の比較
※高層天気図において、実線は等高度線を、点線は等温線を表しています。また、観測地点における「−」の数値は、その地点の500hPaの高さにおける気温を、「+」の数値は、同じ高さにおける気温と露点温度の差を表しています。
●3月10日と25日10時の気象衛星可視画像の比較
10日の気象衛星画像では寒気による筋状雲が日本海から本州の陸上に広がり、一部は太平洋にも流れ出していて上層の寒気が強いことを示しています。一方、25日の画像では日本海は広く晴天域となっていて雲がありません。九州北部から黄海には、気圧の谷前面の雨雲が広がっていますが、本州上には薄い雲がかかている程度で東北から近畿地方にかけては晴れています。
●3月10日と25日の空の様子(市役所から南を見る)
10日の空は日本海側から山越えしてきた積雲が散在しており、上層の寒気が強いことを示しています。一方、25日の空は上空に濃い巻雲が広がり、地平線近くには高積雲があって春らしい様子を示しています。
作成日 2014/04/09
名前 日立市天気相談所