OBSERVATION観測
◇引き続き、不安定な天気が多くなる
先月に引き続き、日本付近で偏西風が南北に大きく蛇行し上層へ周期的に寒気が入りました(下のつくばにおける500hPa気温の推移図を参照)。寒冷渦は偏西風の流れから分離して日本付近をゆっくりと東へ進んだたため、日立市では曇りや雨の日が続く時がありました。寒冷渦が東へ抜けた後は太平洋高気圧が強まり、中旬前半と下旬には晴れて気温が高くなりました。この結果、月平均気温は23.7℃と平年より0.7℃高くなりました。
一方、寒冷渦の影響を受けた期間を除くと晴れる日が多かったことから、月の日照時間は180.9時間(平年比139%)と平年より多くなりました。にわか雨に伴って一時的に強い雨が降る時はあったものの、総降水量が多くなることはなく、関東地方南部を通過した台風第8号の影響もなかったことから、月の降水量は146.5mm(平年比90%)とほぼ平年並みでした。
7月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 23.7 23.0 月降水量(mm) 146.5 162.5 月日照時間(時間) 180.9 130.2
旬平均気温(℃) 順位 観測値 平年値 上旬 22.0 21.5 中旬 23.4 23.0 下旬 25.6 24.4
旬日照時間(時間) 順位 観測値 平年値 上旬 46.9 35.8 中旬 42.9 36.6 下旬 91.1 57.7
●7月の日立市役所における日平均気温の推移とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移
●7月の日立市役所における日最高気温と日照時間の推移
気温の推移を見ると、上旬は寒冷渦がオホーツク海から北海道の東へ進んで停滞し、これに伴って下層へやや冷たい空気が入ってきたため涼しい日が続きました。10日から11日にかけて、台風第8号が本州南岸から関東地方南部を通過して三陸沖へ進むと、太平洋高気圧が勢力を強めて本州付近をおおうようになりました。このため、下層から上層にかけて暖かい空気におおわれ気温が上がりました。10日には最高気温が30.4℃まで上がり、今年初めての真夏日となりました。真夏日初日の記録としては平年(6月29日)よりも11日遅く、昨年(7月6日)よりも4日遅くなっています。
17日になると中国東北区から寒冷渦が進んできて、日本海から本州上をゆっくりと進み、22日の午前中に三陸沖へ抜けました。このため、日立市では21日にかけてにわか雨や雷のなる日が続きました。また、下層へ冷たい空気が入ってきたことから気温が上がらず、肌寒い日が続きました。寒冷渦が東へ抜けた後、太平洋高気圧が勢力を強めて本州付近をおおうようになり、晴れて暑い日が続くようになりました。
このように、寒冷渦が周期的に通過して暑い日が続かなかったことから、今年の7月の真夏日の日数は7日となり、最近の5年間では昨年と並んで少ない年になりました。ただ、例年のようにオホーツク海高気圧におおわれて気温の低くなることがなかったため、月平均気温は平年より0.7℃、昨年より0.5℃高くなりました。
●最近5年間の7月の気温の記録
平均、最高気温(℃) 年 平均
気温最高気温 気温 日 時分 2010 25.0 33.0 28 10:48 2011 25.0 34.4 4 14:53 2012 23.6 33.2 17 11:45 2013 23.2 32.9 6 14:20 2014 23.7 33.9 27 11:36
気温の日数 年 真夏日 熱帯夜 2010 12 0 2011 10 1 2012 11 3 2013 7 0 2014 7 0 平年値 7.1 0.3
●参考:7月5日、15日、20日及び25日09時の地上天気図と500hPa面高層天気図
5日、15日、20日及び25日の500hPa面高層天気図を比べてみると、上層の高気圧(太平洋高気圧)の張り出しに明確な違いのあることが分かります。15日と25日は太平洋高気圧が勢力を強めて本州付近へ張り出しています。特に、25日は高気圧の中心が紀伊半島の南にあり、東北地方まで高気圧におおわれています。一方、5日と20日は太平洋高気圧の勢力が南または東へ後退し、本州付近は気圧の谷場となっています。特に、20日の場合は上層の低気圧(寒冷渦)が東北地方から東海上へ進み、北日本から東日本は寒気におおわれました。日立市では、寒冷渦の前面に入った17日夜から19日にかけて雷を伴って断続的に雨が降りました。18日5時には諏訪スポーツ広場で1時間降水量34.5mmを記録するなど、一時的に激しい雨の降る時もありました。
◇台風第8号が房総半島を横断、勢力が弱く日立市への影響はなかった
台風第8号は8日から9日昼にかけて東シナ海を北上した後、9日昼過ぎには向きを東へ変えて10日07時前には鹿児島県阿久根市付近に上陸しました。10日の日中は四国の南を東へ進んだ後、18時30分頃には和歌山県南部に上陸しました。台風はその後、東海道沖を東北東に進み、11日02時半頃に伊豆半島南 部を通過し、11日5時前に千葉県富津市付近に上陸した後、11日09時には 関東の東で温帯低気圧に変わりました。
一方、9日に中国東北区へ進んできた寒冷渦は、10日以降アムール川下流に停滞するようになりました。この寒冷渦の南側を回る偏西風に台風からの湿った空気が流れ込み、9日は佐渡島付近から東北地方南部で雨雲が発達しました。この発達した雨雲の南端がかかり、日立市でも9日の未明から昼にかけてやや強い雨が降りました。台風が東へ進むにつれて、湿った空気の通り道は北へ移っていきました。このため、10日の日立市では雨はほとんど降りませんでした。
台風は九州へ上陸した後、急速に勢力が衰えるともに台風を取り巻く雨雲もほとんど消えました。このため、台風が房総半島を通過した11日は、日立市で降水量が多くなることはありませんでした。また、勢力が弱まったことから風が強まることもありませんでした。ただ、台風が四国の南を進んだ10日は南東海上の高気圧との間で気圧傾度が大きくなり、昼から夜にかけて南西の風がやや強く吹きました。なお、南西の風とともに暖かい空気が入ってきたことから気温が上がり、日立市役所では13時20分に最高気温30.4℃を記録しました。
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日降水量 |
総降水量 |
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9日 | 10日 | 11日 |
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日時 | ||
日立市役所 | 46.0 | 0.5 | 6.5 | 53.0 | 20.5 | 09日10時57分 |
北部消防署 | 46.0 | 0.5 | 4.5 | 51.0 | 11.5 | 09日04時00分 |
本山 | 40.0 | **.* | **.* | **.* | 14.0 | 09日11時00分 |
西部出張所 | 39.5 | 0.5 | 5.5 | 45.5 | 9.0 | 09日11時00分 |
諏訪広場 | 33.0 | 1.0 | 14.5 | 48.5 | 14.5 | 09日11時00分 |
南部支所 | 26.0 | 0.5 | 4.0 | 30.5 | 10.0 | 09日11時00分 |
十王交流センター | 55.0 | 1.0 | 9.0 | 65.0 | 16.0 | 09日10時00分 |
日立会瀬 | 42.0 | 1.0 | 6.5 | 49.5 | 18.0 | 09日11時04分 |
水戸(金町) | 17.5 | 0.5 | 3.5 | 21.5 | 6.0 | 09日12時18分 |
●7月10日の風と気圧の記録
地点 | 最大風速(m/s) | 最大瞬間風速(m/s) | 海面気圧(hPa) | |||||
風速 | 同風向 | 同時刻 | 風速 | 同風向 | 同時刻 | 最低気圧 | 同時刻 | |
日立市役所 | 9.6 | 南西 | 13:40 | 16.0 | 南西 | 15:36 | 996.5 | 24:00 |
南部支所 | 8.6 | 南西 | 15:24 | 16.2 | 南南西 | 15:18 | - | - |
水戸(金町) | 8.4 | 南南西 | 12:56 | 16.5 | 南南西 | 13:31 | 995.1 | 24:00 |
●7月11日の風と気圧の記録
地点 | 最大風速(m/s) | 最大瞬間風速(m/s) | 海面気圧(hPa) | |||||
風速 | 同風向 | 同時刻 | 風速 | 同風向 | 同時刻 | 最低気圧 | 同時刻 | |
日立市役所 | 4.3 | 南西 | 03:23 | 12.1 | 南西 | 02:13 | 991.9 | 09:28 |
南部支所 | 5.3 | 南西 | 23:11 | 9.6 | 南 | 03:17 | - | - |
水戸(金町) | 4.1 | 南 | 03:05 | 8.1 | 南 | 02:58 | 990.7 | 09:23 |
●7月10日から11日の気圧と風速の推移
●参考:7月9日10時00分と11日06時00分の降水レーダー図
●参考:台風第8号の経路図と7月6日〜11日の総降水量分布図(気象庁の資料から作成)
●参考:7月9日09時と11日06時の地上天気図
●参考:7月9日09時と11日08時の気象衛星可視画像
作成日 2014/08/07
名前 日立市天気相談所