OBSERVATION観測
◇中旬以降、晴れて気温が高くなる
上旬は日本付近で偏西風が南北に蛇行し、寒気が入りやすく天気がぐずつきました(下のつくばにおける500hPa気温の推移図を参照)。このため上旬の平均気温は20.5℃と平年より1.0℃低くなりました。9日に上層の気圧の谷が東へ抜けた後、本州付近は太平洋高気圧におおわれるようになり、下層から上層にかけて暖かい空気におおわれて気温は平年より高くなりました。中旬の平均気温は26.3℃、下旬の平均気温は26.8℃と、平年より2〜3℃高くなりました。この結果、月平均気温は24.6℃と平年より1.6℃高くなりました。
上旬は寒気の影響で曇りや雨の日が続いた結果、1日から9日までの日照時間は1.0時間しかありませんでした。しかし、中旬以降は太平洋高気圧におおわれ晴れる日が多くなりました。このため、月の日照時間は148.8時間(平年比114%)と平年よりわずかに多くなりました。また、上旬は低気圧や前線の影響で降水量が多くなったものの、中旬以降は雨の降る日が少なくなりました。ただ、16日に西日本を北上した台風第11号の影響で71.5mmの雨が降ったことから、月の降水量は179.5mm(平年比110%)とほぼ平年並みになりました。
7月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 24.6 23.0 月降水量(mm) 179.5 162.5 月日照時間(時間) 148.8 130.2
旬平均気温(℃) 順位 観測値 平年値 上旬 20.5 21.5 中旬 26.3 23.0 下旬 26.8 24.4
旬日照時間(時間) 順位 観測値 平年値 上旬 10.5 35.8 中旬 61.9 36.6 下旬 76.4 57.7
●7月の日立市役所における日平均気温の推移とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移
●7月の日立市役所における日最高気温と日照時間の推移
今年の7月は10日を境にして天気が大きく変わり、上旬の梅雨寒から一転して中旬以降は暑い晴天が続きました。日立市役所における最高気温の推移をみると、9日21.1℃、10日24.0℃、11日29.8℃と10日から11日にかけて一気に6℃近く気温が上がり、12日には30.2℃と今年初めての真夏日(最高気温30℃以上の日)となりました。なお、真夏日初日の記録としては平年(6月29日)よりも13日遅く、昨年(7月10日)よりも2日遅くなっています。
その後、月末まで日平均気温が平年を上回る日が続きました。特に、中旬は日本海を進む低気圧に向かって南西の風が吹いてフェーン現象が起き、気温が著しく高くなる日がありました。このため、中旬の平均気温は26.3℃と平年より3.3℃高くなりました。これは、日立市役所観測開始以来第3位の高い気温でした。
なお、11日以降は最高気温が30℃を超える日が多くなりました。しかし、下旬の後半になると上層の高気圧の中心が関東地方に南に移動し、日立市では東寄りの風が吹くようになり、最高気温は29℃前後までしか上がらなくなりました。この結果、7月の真夏日の日数は12日と、気温が高かった割には真夏日の日数は多くなりませんでした。
●7月の気温の記録
月平均気温(℃) 順位 年 平均気温 1 2001 25.9 2 1955 25.5 3 1978 25.4 4 2000 25.2 省略 11 2015 24.6 平年値 23.0
中旬平均気温(℃) 順位 年 平均気温 1 2011 26.8 2 2001 26.6 3 2015 26.3 4 2002 26.2 5 1955 26.0 平年値 23.0
下旬平均気温(℃) 順位 年 平均気温 1 1999 28.1 2 1955 27.1 3 1961 27.1 4 1995 26.9 5 2015 26.8 平年値 24.4
真夏日の日数 順位 年 日数 1 2001 19 2 2002 17 2 2000 17 4 2004 14 5 1995 13 6 2015
2010
199912 平年値 7.1 ※順位は気温の高い方または日数の多い方からで、1953年〜2015年の統計
◇7月の日立市内の気温と降水量
7月の日立市内の気温の観測結果を比較すると、平均気温は引き続き日立市役所が最も高くなっています。次いで、最も北に位置する十王交流センターが市役所とほぼ同じ気温でした。一方、山間部にある本山と標高の高い諏訪広場及び海に近い北部消防署は気温の低い方になっています。なお、市内7地点の平均気温は23.3℃で、水戸の月平均気温25.2℃よりも1.9℃低くなりました。6月に引き続き、水戸の気温は日立市内平均よりも高くなっています。
一方、月の降水量の市内平均は183.9mmで、6月の平均降水量122.7mmよりも60mm近く多くなりました。観測地点の間の差は6月よりも小さくなり、最も降水量の多かった諏訪広場の199.5mmに対して、最も少なかった西部支所は165.0mmと1.2倍の差でした。また、市内7地点の平均降水量183.9mmに対して、水戸の月降水量は118.0mmと11%ほど少なくなりました。
●7月の日立市内と水戸の気温、降水量の観測結果
7月の気温(℃)の記録 観測地点 平均
気温最高気温 最低気温 気温 日時 気温 日時 日立市役所 24.6 35.2 14 12:04 17.3 10 02:28 十王交流センター 24.5 35.1 14 14:38 17.2 06 02:29 北部消防署 22.7 31.8 23 12:37 16.0 09 03:49 本山(中学校跡) 22.2 32.9 14 13:21 15.0 08 17:07 西部支所 23.2 33.9 14 12:58 15.8 06 02:18 諏訪広場 22.4 32.7 14 12:36 15.3 07 02:58 南部支所 23.7 34.4 14 11:53 16.6 09 04:28 上記7地点の平均 23.3 - -
- -
日立会瀬 24.4 35.2 14 13:37 17.1 07 03:06 水戸(金町) 25.2 34.8 14 13:06 17.7 07 03:52
7月の降水量(mm)の記録 観測地点 月降水量 日最大降水量 1時間最大降水量 降水量 日 降水量 日時 日立市役所 179.5 71.5 16 29.0 16 07:22 十王交流センター 197.0 83.0 16 36.5 16 07:31 北部消防署 176.5 77.0 16 29.0 16 07:28 本山(中学校跡) 195.5 85.0 16 29.5 16 07:26 西部支所 165.0 64.0 16 21.0 16 14:14 諏訪広場 199.5 62.0 16 27.5 16 07:19 南部支所 174.0 47.5 16 20.5 16 07:12 上記7地点の平均 183.9 - -
- - 日立会瀬 191.5 61.5 16 26.0 16 07:18 水戸(金町) 164.5 33.5 03 22.0 24 16:53
※日立会瀬と水戸(金町)は気象庁の観測地点。
◇南西風のフェーンによる高温(7月14日)
10日から12日にかけて台風第9号が東シナ海をゆっくりと北上した影響で、太平洋高気圧の勢力が強まり、下降気流に伴って地上では気温が高くなりました。さらに、13日から14日にかけては台風から変わった低気圧が日本海を東北東へ進み、この低気圧に向かう南西の風が吹いたことから、関東地方ではフェーン現象が起きて気温が一段と高くなりました。
13日の関東地方の最高気温は、群馬県館林で37.9℃、東京都八王子で37.3℃など24地点で最高気温が35℃以上となりました。茨城県内でも、古河で最高気温36.6℃、笠間で同じく35.5℃を記録するなど、15観測地点のうち北茨城を除く14地点で最高気温が30℃以上となりました。14日は南西の風が強まったため、13日よりも気温が上がりました。各地の最高気温は、群馬県館林で39.3℃、茨城県大子で38.3℃など31地点で最高気温が35℃以上となりました。茨城県内では15観測地点すべてで最高気温が30℃以上となるとともに、下館、つくば、龍ヶ崎を除いて今年の最高気温となりました。
日立市役所では13日の13時から風向が南西に変わった後、気温が一気に4℃近く上がり、14時18分に日最高気温34.6℃を記録しました。その後も14日の夜遅くにかけて南西の風がやや強く吹き続けたため、13日の夜から14日の朝にかけて気温は26℃近くまでしか下がりませんでした。14日は日の出とともに気温が上がり始め、10時過ぎに南西の風が強まると一気に気温が上がり、12時04分に日最高気温.35.2℃を記録しました。これは、今年の最高気温であるとともに、今年初めての猛暑日(最高気温35℃以上の日)でした。
最高気温を記録した後、気温は徐々に下がっていきました。しかし、南西の風が吹き続けていたことから気温の下がり方は鈍く、19時00分の気温は30.1℃と30℃を超えていました。21時前には風が弱まったものの風向が南西から変わらなかったため、最低気温は21時56分の25.4℃までしか下がらず、14日は今年初めての熱帯夜となりました。
日立市内では、十王交流センターで最高気温35.1℃を記録した以外は最高気温が35℃以上となった地点はありませんでした。また、日立市役所以外の地点では最低気温は25℃未満で、熱帯夜となった地点はありませんでした。日立市役所と水戸、つくばの気温の推移をみると、南西の風が強く吹いていた時間帯では日立市役所の気温が最も高くなっており、日立市役所は南西の風に伴うフェーン現象により気温の高くなりやすい地点であることを示しています。
地点 |
日平均 気温 |
最高気温 | 最低気温 | ||
気温 | 時刻 | 気温 | 時刻 | ||
日立市役所 | 29.5 | 35.2 | 12:04 | 25.4 | 21:56 |
十王交流センター | 28.4 | 35.1 | 14:38 | 22.9 | 24:00 |
北部消防署 | 26.4 | 31.8 | 15:50 | 22.0 | 23:34 |
本山 | 26.2 | 32.9 | 13:21 | 22.5 | 04:17 |
西部支所 | 26.7 | 33.9 | 12:58 | 20.4 | 04:59 |
諏訪広場 | 27.1 | 32.7 | 12:36 | 23.2 | 23:30 |
南部支所 | 28.4 | 34.4 | 11:53 | 23.4 | 23:04 |
日立会瀬 | 29.4 | 35.2 | 13:37 | 24.4 | 21:16 |
水戸(金町) | 29.8 | 34.8 | 13:06 | 26.0 | 04:04 |
参考までに、2010年以降の猛暑日を調べてみると下表のようになっています。2012年を除いて、各年とも猛暑日が1日ありました(なお、2006年から2009年にかけては猛暑日はありませんでした)。いずれの日も、南西の風によるフェーン現象が起きて気温が高くなりました。また、2013年8月30日を除いて南西の風が一昼夜以上吹き続けたため、最低気温が下がらずに熱帯夜(最低気温25℃以上の日)となりました。なお、関東地方全域で南西の風が吹いて気温が上がったため、水戸でも同じように気温が高くなり、日立市役所との差はあまりありませんでした。
年 | 月日 | 日立市役所 | 水戸(金町) | 気象概況 | ||||||
最高気温 | 時刻 | 最低気温 | 時刻 | 最高気温 | 時刻 | 最低気温 | 時刻 | |||
2010 | 09月07日 | 35.4 | 12:34 | 25.5 | 23:49 | 35.6 | 12:56 | 26.0 | 23:25 | 日本海の停滞前線に吹き込む南西風のフェーン |
2011 | 08月11日 | 35.6 | 12:08 | 25.1 | 04:53 | 35.4 | 12:39 | 24.1 | 22:08 | サハリン付近を東進する低気圧に吹き込む南西風のフェーン |
2013 | 08月30日 | 35.1 | 12:45 | 23.0 | 00:13 | 36.3 | 14:58 | 22.3 | 05:39 | 本州上を南下する前線に向かって吹き込む南西風のフェーン |
2014 | 08月05日 | 36.3 | 14:25 | 26.1 | 05:11 | 36.1 | 14:15 | 26.0 | 05:18 | 日本海の停滞前線に吹き込む南西風のフェーン |
2015 | 07月14日 | 35.2 | 12:04 | 25.4 | 21:56 | 34.8 | 13:06 | 26.0 | 04:04 | 日本海北部の低気圧に吹き込む南西風のフェーン |
※2015年は7月31日までの記録。
●7月13日から14日の気温と風向、風速の推移
●7月6日14時と14日13時の日立市内の気温の分布
●参考:7月6日14時と14日13時のアメダスによる気温と風の分布
●参考:7月6日と14日09時の地上天気図及び500hPa面高層天気図
作成日 2015/08/08
名前 日立市天気相談所