OBSERVATION観測
◇上旬は天気がぐずつく
上旬は、8月の終わりから引き続いて日本の西側で偏西風が南へ蛇行し、日本付近が気圧の谷となりました。このため、本州付近に前線が停滞して低気圧がたびたび発生し、曇りや雨の日が続きました。11日に台風第17号が日本の東海上を北上した後は大気の流れが変わり、低気圧と高気圧が交互に通過して天気は周期的に変わるようになりました。上旬は天気がぐずついたこと、中旬以降は下層へ寒気が入ったことから、気温は平年を下回る日が多くなりました。月平均気温は21.3℃と平年より0.5℃低くなりました。また、月の日照時間は115.0時間(平年比86%)と平年より少なくなりました。特に、上旬の日照時間は13.7時間と平年の27%しかありませんでした。反対に、月の降水量は273.0mmと平年の153%になり、9月の降水量としては観測開始以来4番目に多い記録となりました。
9月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 21.3 21.8 月降水量(mm) 273.0 178.8 月日照時間(時間) 115.0 134.3
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 22.8 23.6 中旬 21.3 21.9 下旬 19.7 19.8
旬日照時間(時間) 旬 観測値 平年値 上旬 13.7 49.9 中旬 42.8 42.8 下旬 58.5 41.6
●9月の日立市役所における日平均気温とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移
●9月の日立市役所における日最高気温と日照時間の推移
このように、今年の9月は平年よりも気温の低い日が多くなりました。日最高気温が30℃以上となる真夏日は、9月2日の30.4℃以降はありませんでした。この後、10月に真夏日となる日がなければ、9月2日が真夏日終日となります。これは平年よりも11日早く、過去6年間では2014年の8月24日に次いで早い記録となります。
ただし、強い寒気の流入がなかったことと、天気がぐづつき良く晴れて冷え込みが強まることがほとんどなかったことから、最低気温は下がりませんでした。8月1日以降に初めて日最低気温が15℃を下回った日は9月30日で、平年よりも4日遅く、過去6年間の中では2012年の10月12日に次いで遅くなりました。
上旬と下旬の気圧配置を比較すると、上層の偏西風の流れが異なっていました。一例として、9月7日と29日の500hPa面高層天気図を比較してみました。7日は、日本海北部に寒冷渦があり、沿海州から東シナ海にかけて気圧の谷がのびています。このため、本州の上層では西南西からの流れとなり、湿った空気が入って雨が降りました。29日は、オホーツク海に寒冷渦があり、南へのびる気圧の谷は日本の東へ抜けています。このため、本州の上層では西北西からの流れとなり、乾燥した空気が入って晴れました。
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※最低気温15℃未満初日は、その年の8月1日以降に日最低気温が初めて15℃未満となった日。
※2015年の真夏日終日は、9月30日までの暫定的な記録です。
※降水量の順位は数値の多い方からで、1953年から2015年の統計。
●2015年9月7日と29日09時の500hPa面高層天気図と地上天気図
◇9月の日立市内の気温と降水量
9月の日立市内の気温の観測結果を比較すると、平均気温は引き続き日立市役所が最も高くなりました。次いで、最も北に位置する十王交流センターが市役所とほぼ同じ気温でした。一方、山間部にある西部支所と本山、標高の高い諏訪広場は気温の低い方になっています。市内7地点の平均気温は19.8℃で、8月より3.2℃低くなりました。また、水戸の月平均気温は21.5℃と日立市の平均よりも1.7℃高く、8月に引き続いて水戸の気温は日立市内平均よりも高くなっています。
一方、月の降水量の市内平均は278.2mmで、8月の平均降水量90.3mmよりも180mm近く多くなりました。観測地点の間の差は8月とほぼ同じで、最も降水量の多かった十王交流センターの352.0mmに対して、最も少なかった南部支所は210.0mmと1.7倍の差でした。また、市内7地点の平均降水量278.2mmに対して、水戸の月降水量は232.0mmと40mm程少なくなりました。
●9月の日立市内と水戸の気温、降水量の観測結果
9月の気温(℃)の記録 観測地点 平均
気温最高気温 最低気温 気温 日時 気温 日時 日立市役所 21.3 30.4 02 15:01 13.7 30 05:43 十王交流センター 21.1 31.6 02 14:49 13.1 30 05:19 北部消防署 19.8 30.1 02 14:52 11.9 30 05:53 本山(中学校跡) 18.0 26.9 04 12:15 8.7 30 05:23 西部支所 18.8 28.7 04 12:52 8.5 30 05:43 諏訪広場 18.6 27.9 02 14:06 11.0 30 06:00 南部支所 20.7 30.4 02 14:57 14.3 23 04:45 上記7地点の平均 19.8 - -
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日立会瀬 21.7 32.0 02 13:12 14.7 30 06:01 水戸(金町) 21.5 31.8 02 15:40 12.8 30 05:35
9月の降水量(mm)の記録 観測地点 月降水量 日最大降水量 1時間最大降水量 降水量 日 降水量 日時 日立市役所 273.0 86.5 17 35.5 17 22:53 十王交流センター 352.0 116.0 17 42.5 17 22:50 北部消防署 323.5 92.0 17 39.5 10 11:14 本山(中学校跡) 304.0 74.5 17 26.5 04 16:43 西部支所 236.5 50.5 09 28.5 04 16:36 諏訪広場 248.5 81.0 17 36.0 17 22:34 南部支所 210.0 75.0 17 34.5 17 22:41 上記7地点の平均 278.2 - -
- - 日立会瀬 270.0 90.5 17 41.5 17 22:47 水戸(金町) 232.0 70.0 17 38.5 10 09:14
※日立会瀬と水戸(金町)は気象庁の観測地点。
◇動きの遅い寒冷渦の影響で天気がぐずつく(9月6日〜10日)
6日に東シナ海へ進んできた寒冷渦は日本付近で動きが遅くなり、8日に九州地方、10日には四国から近畿地方を通過して、11日の夜に関東地方の東へ進みました。このため、本州の上層では西南西から南西の流れが続き、湿ったた空気が流れ込んでぐずついた天気が続きました。特に、日本の南海上を北上してきた台風第18号が9日10時過ぎに愛知県知多半島に上陸して日本海へ進んだ後、寒冷渦の東側へ南から湿った空気が流れ込み、9日の昼から10日の昼にかけて関東地方で雨雲が南北に帯状に発達しました。寒冷渦の動きが遅かったことと、オホーツク海に強い勢力の高気圧があって南東へゆっくりと移動していたことから、雨雲の東西方向の位置はほとんど変わらず、同じ地域で強い雨が降り続きました(下の降水レーダー図参照)。
関東地方における6日〜10日までの総降水量は、栃木県今市で668.0mm、五十里で645.0mm土呂部571.5mmなどでした。茨城県内では、古河で308.5mm、坂東で291.0mm、つくばで281.0mmなど県西部で降水量が多くなりました。日立市内の6日〜10日までの総降水量は、最も多かったのが北部消防署の190.0mm、最も少なかったのは南部支所の89.0mmで、市の北部沿岸部で降水量が多くなりました。
北部消防署における1時間降水量の推移を見ると、6日の夕方から断続的に雨が降るようになりました。しかし、雨の止んでいる時間が多く、1時間降水量も10mm前後と強い雨は降りませんでした。10日の朝になると、寒冷渦の東進に伴って帯状の雨雲が東へ移動を始め、昼前には日立市を通過しました。このため、日立市内でも、北部を中心に1時間降水量が30〜40mmの激しい雨が降りました。雨雲が停滞することなく東へ抜けて行ったため、日立市では総降水量が多くなることはなく、雨による被害もありませんでした。
11日の昼には寒冷渦は関東地方の東へ抜け、上層の流れが西北西からの流れに変わるとともに昼頃から晴れ間が出てきて、11日の日照時間は1.3時間となりました。日立市役所で0.2時間以上の日照時間を観測したのは、5日以来6日ぶりのことでした。
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日降水量 |
総降水量 |
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6日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 |
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日時 |
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日時 | ||
日立市役所 | 23.5 | 37.0 | 15.0 | 37.5 | 47.0 | 160.0 | 32.5 | 10日11時04分 | 11.5 | 10日10時33分 |
十王交流センター | 32.5 | 33.5 | 23.5 | 38.0 | 57.0 | 184.5 | 39.5 | 10日11時20分 | 18.0 | 10日10時34分 |
北部消防署 | 33.5 | 36.0 | 23.0 | 37.0 | 60.5 | 190.0 | 39.5 | 10日11時14分 | 19.5 | 10日10時26分 |
本山 | 21.5 | 37.0 | 23.5 | 55.5 | 30.5 | 168.0 | 19.0 | 10日11時05分 | 5.5 | 10日10時26分 |
西部支所 | 13.5 | 21.5 | 14.0 | 50.5 | 25.0 | 124.5 | 13.0 | 10日10時38分 | 4.0 | 10日11時46分 |
諏訪広場 | 21.0 | 32.5 | 18.5 | 34.0 | 28.5 | 134.5 | 24.5 | 10日10時42分 | 8.5 | 10日09時52分 |
南部支所 | 15.0 | 16.5 | 15.5 | 29.0 | 13.0 | 89.0 | 9.5 | 10日10時50分 | 5.0 | 10日10時01分 |
日立会瀬 | 22.0 | 32.0 | 17.5 | 40.5 | 36.0 | 148.0 | 26.0 | 10日10時42分 | 9.0 | 10日10時19分 |
水戸(金町) | 20.5 | 22.5 | 23.0 | 21.5 | 45.0 | 132.5 | 38.5 | 10日09時14分 | 10.5 | 10日08時33分 |
古河 | 10.0 | 2.0 | 27.5 | 214.5 | 54.5 | 308.5 | 45.5 | 09日17時18分 | 19.5 | 09日16時51分 |
※総降水量は、6日16時〜10日24時までの合計。
●北部消防署における9月6日16時から10日24時までの降水量の推移
●参考:9月9日18時00分〜10日12時00分の降水レーダー図
9日14時頃から10日04時頃にかけて、南北に帯状に発達した雨雲が栃木県から茨城県西部、埼玉県東部にかかり続けた。この雨雲は、10日04時過ぎからゆっくりと東へ移動していった。雨雲は東へ進むにつれて弱まっていったため、日立市では降水量が多くならなかった。
●参考:9月6日〜11日09時の地上天気図
●参考:9月6日〜11日10時の気象衛星可視画像
●参考:9月8日と10日の500hPa面高層天気図と気象衛星水蒸気画像
作成日 2015/10/07
名前 日立市天気相談所