OBSERVATION観測
◇暖かかった晩秋
低気圧と高気圧が交互に通過し、天気は数日の周期で変わりました。ただ、上層の気圧の谷が頻繁に本州付近を通過し、偏西風が南西からの流れになりやすかったことから、関東地方では上旬の後半から下旬の前半にかけて曇りや雨の日が多くなりました。このため、月の日照時間は129.2時間(平年比82%)と、平年よりかなり少なくなりました(11月の日照時間としては、観測開始以来5番目に少ない)。反対に、月の降水量は150.0mm(平年比192%)と、平年よりかなり多くなりました。また、偏西風が南西から北東へ流れたことから北からの寒気が入りにくくなり、月平均気温は13.3℃(平年比+1.4℃)と平年よりかなり高くなりました。
11月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 13.3 11.9 月降水量(mm) 150.0 78.3 月日照時間(時間) 129.2 157.9
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 15.0 13.7 中旬 14.2 11.8 下旬 10.9 10.1
旬日照時間(時間) 旬 観測値 平年値 上旬 50.1 52.5 中旬 38.3 50.0 下旬 40.8 55.4
●11月の日立市役所における日平均気温の推移とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移
●11月の日立市役所における風向頻度分布と日照時間の推移
ただ、月の初めと終わりに気温の低くなる日があったことから、2004年11月の月平均気温14.1℃ほどには高くならず、11月の平均気温としては観測開始以来6番目に高い気温でした。一方、天気のぐずつく日が多くて朝の冷え込みが弱かったことから、日最低気温の月平均は10.3℃と観測開始以来2番目に高い記録となりました。
さらに、例年のように強い寒気の南下がなかったことから冬型の気圧配置が現れにくく、北西の季節風の割合は少なくなりました。反対に、天気がぐずついたことから北東から北北東の風の割合が多くなり、平年の2〜3倍近くありました。また、北西の風の割合が少なかったことから湿度が下がりませんでした。月平均湿度は79%(平年値67%)と平年をかなり上回り、11月の平均湿度としては観測開始以来2009年と並んで最も高い記録となりました。
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※順位は数値の高い方または少ない方からで、1953年〜2015年の統計。
◇11月の日立市内の気温と降水量
11月の日立市内の気温の観測結果を比較すると、平均気温は引き続き日立市役所が最も高くなりました。次いで、最も北に位置する十王交流センターが市役所より0.5℃低くなりました。一方、山間部にある西部支所と本山、標高の高い諏訪広場は気温の低い方になっています。市内7地点の平均気温は11.5℃で、10月より3.7℃低くなりました。また、水戸の月平均気温は12.6℃と日立市の平均よりも1.1℃高く、10月に引き続いて水戸の気温は日立市内平均よりも高くなっています。
一方、月の降水量の市内平均は146.2mmで、10月の平均降水量42.8mmよりも100mm近く多くなりました。観測地点の間の差は10月寄りも小さくなり、最も降水量の多かった十王交流センターの159.0mmに対して、最も少なかった西部支所は116.5mmと1.4倍の差でした。また、市内7地点の平均降水量146.2mmに対して、水戸の月降水量は173.0mmと30mm程多くなりました。
●11月の日立市内と水戸の気温、降水量の観測結果
11月の気温(℃)の記録 観測地点 平均
気温最高気温 最低気温 気温 日時 気温 日時 日立市役所 13.3 22.5 09 13:14 4.8 28 05:51 十王交流センター 12.8 22.3 09 12:11 3.7 29 04:35 北部消防署 11.9 21.9 09 13:02 2.4 29 06:05 本山(中学校跡) 9.8 18.5 09 12:03 0.2 28 05:45 西部支所 9.7 20.6 06 11:54 -1.7 28 06:42 諏訪広場 10.6 19.4 09 13:17 1.6 29 03:59 南部支所 12.1 20.5 05 12:53 0.2 28 04:24 上記7地点の平均 11.5 - -
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日立会瀬 13.4 22.5 09 12:39 3.9 29 05:55 水戸(金町) 12.6 21.7 05 13:31 1.4 28 06:42
11月の降水量(mm)の記録 観測地点 月降水量 日最大降水量 1時間最大降水量 降水量 日 降水量 日時 日立市役所 150.0 35.5 02 11.0 02 11:17 十王交流センター 159.0 40.0 02 14.0 02 11:20 北部消防署 151.0 38.0 02 13.0 02 11:20 本山(中学校跡) 154.5 43.5 02 15.5 02 12:00 西部支所 116.5 40.5 02 15.5 02 12:01 諏訪広場 151.5 38.0 02 12.5 02 11:11 南部支所 141.0 29.5 02 12.0 03 03:19 上記7地点の平均 146.2 - -
- - 日立会瀬 170.0 38.5 02 11.5 02 12:01 水戸(金町) 173.0 34.0 02 13.5 03 03:53
※日立会瀬と水戸(金町)は気象庁の観測地点。
◇天気がぐずつく(11月22日〜26日)
22日から26日にかけて、上層の気圧の谷の影響で曇りや雨のぐずついた天気が続きました。また、26日には朝鮮半島から日本海へ進んできた寒冷渦の影響で大気の状態が不安定となり、雨が降っている中で日が射したため北の空にはっきりとした虹を見ることが出来ました。27日には寒冷渦が北海道の西へ進み、この南側を回り乾燥した空気が関東地方へ入ってきたたため、日立市では5日ぶりに晴れの天気となりました。
21日は大陸から張り出す高気圧におおわれ晴れました。しかし、華中を東へ進む上層の気圧の谷の影響で昼から雲が広がり、22日は一日曇りの天気が続きました。23日には上層の気圧の谷が東シナ海まで進んできて本州の上層で西南西からの流れが強まったため、日立市では弱い雨が降ったり止んだりする天気となりました。24日は上層の気圧の谷が本州中部を通過して東海上へ抜けたため、昼から晴れてきました。しかし、25日には中国東北区へ寒冷渦が進んできて、本州の上層で西南西からの流れが再び強まったため、日立市では朝から雲が広がり昼からは弱い雨が降り出しました。
26日には寒冷渦は日本海へ進み、南側を回る乾燥した空気が西から本州上へ流れ込んできました。このため、雨は昼過ぎには止んで曇りの天気となりました。ただ、上層では南西からの流れが続いたため、夜にかけて雲の多い天気が続きました。また、昼前後には雲の切れ目が出来て日が射したため、11時前後と12時過ぎの2回にわたって虹が見られました。晩秋から初冬にかけては、上層の寒気の影響で晴れたかと思うと雲が広がり一時的に雨の降る時雨が起こりやすくなります。時雨が降る時は日が射していることも多いため、虹を見られる機会があります。日立市役所では、2001年11月12日と2002年11月5日、2012年11月7日に寒気の影響によるにわか雨により、副虹を伴った鮮やかな虹が観察されています。
27日には寒冷渦は北海道へ進み、かわって西から高気圧が本州上へ張り出してきたため、日立市では朝から快晴の天気となりました。この期間、気圧の谷や寒冷渦に伴う低気圧は東海上へ抜けるまで発達しなかったことから、日立市では雨が強まることはありませんでした。22日から26日までの日立市役所における総降水量は16.5mmでした。例年の11月は、移動性高気圧におおわれたり冬型の気圧配置になることが多く、日立市では晴れの天気が続きます。しかし、日本の南で上層の高気圧の勢力が強いと、上層の気圧の谷が本州付近を通りやすくなり、関東地方では曇りや雨の天気が続くようになります。2003年11月の下旬にも今回と同じように天気のぐずつく時があり、月の日照時間は116.1時間と、観測開始以来2番目に少なくなりました。
●11月26日12時35分の虹(日立市役所屋上から)
●虹の見える位置の変化
26日の虹は、11時前後と12時過ぎの2回見られました。太陽の位置が西へ移動していったことから、11時の虹の中心は鞍掛山の西側、12時過ぎの虹の中心は鞍掛山の東側にありました。また、この日の太陽の南中時刻が11時24分であったことから、12時過ぎの虹よりも11時の虹の方が見える位置が低くなっていました。
●11月26日12時の地上天気図と12時00分の気象衛星可視画像
●11月23日と26日09時の500hPa面高層天気図
※高層天気図において、実線は等高度線を、点線は等温線を表しています。また、観測地点における上段の数値は、その地点の500hPaの高さにおける気温を、下段の数値は、同じ高さにおける気温と露点温度の差を表しています。
●参考:11月22日〜27日の気象衛星可視画像
●参考:11月22日〜27日の地上天気図
作成日 2015/12/09
名前 日立市天気相談所