OBSERVATION観測
◇冷え込みが弱く、気温の高い日が続く
上旬前半は冬型の気圧配置となる日が多く、晴れて乾燥した天気が続きました。しかし、上旬後半からは低気圧が頻繁に日本付近を通過するようになり、冬型の気圧配置は長続きせず、雲の広がる日が多くなりました。この結果、月の日照時間は161.8時間(平年比85%)と、平年より少なくなりました。一方、27日から29日にかけて本州南岸を通過した低気圧によって日立市役所では119.0mmの雨が降ったことから、月の降水量は141.5mm(平年比285%)と、平年よりかなり多くなりました。また、冬型の気圧配置が続かず寒気の南下が弱かったことと、低気圧に向かって南から暖かい空気が入ったことから、上旬後半から気温が平年を上回る日が続きました。このため、月平均気温は6.6℃と平年より2.0℃高くなり、1月の気温としては観測開始以来最も高くなりました。
1月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 6.6 4.6 月降水量(mm) 141.5 49.6 月日照時間(時間) 161.8 191.3
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 5.8 5.1 中旬 6.5 4.5 下旬 7.4 4.3
旬日照時間(時間) 旬 観測値 平年値 上旬 62.1 61.2 中旬 44.8 59.1 下旬 54.9 71.2
●1月の日立市役所における日平均気温とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移
●1月の日立市役所における日最低気温と日照時間の推移
◇1月の日立市内の気温と降水量
1月の日立市内の気温の観測結果を比較すると、平均気温は引き続き日立市役所が最も高く、市内平均より1.2℃高くなりました。次いで気温が高かったのは北に位置する十王交流センターと北部消防署で、市役所より0.4℃低くなりました。一方、山間部にある西部支所と本山は気温が低い方になっています。市内7地点の平均気温は5.4℃で、12月より1.6℃低くなりました。また、水戸の月平均気温は5.6℃と日立市の平均より0.2℃高くなりました。なお、昨年1月の日立市内の平均気温は3.4℃、水戸の平均気温も3..4℃で、日立市に比べて水戸は昨年よりも気温がより高くなっています。
一方、月の降水量の市内平均は150.9mmで、12月の平均降水量40.5mmより110mm近く多くなりました。最も降水量の多かった本山の227.0mmに対して、最も少なかった南部支所は100.5mmと2.3倍の差でした。また、市内7地点の平均降水量150.9mmに対して、水戸の月降水量は124.0mmと25mm近く少なくなりました。
●1月の日立市内と水戸の気温、降水量の観測結果
1月の気温(℃)の記録 観測地点 平均
気温最高気温 最低気温 気温 日時 気温 日時 日立市役所 6.6 17.8 29 11:10 -0.7 01 04:31 十王交流センター 6.2 17.3 30 15:30 -1.5 01 04:31 北部消防署 6.2 17.0 30 15:17 -1.2 22 07:19 本山(中学校跡) 3.3 14.0 30 13:42 -3.8 22 06:06 西部支所 4.1 15.7 30 14:10 -4.6 22 07:13 諏訪広場 5.5 15.6 30 14:25 -2.0 22 06:46 南部支所 6.0 16.8 30 14:56 -2.8 06 07:04 上記7地点の平均 5.4 - -
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日立会瀬 6.7 16.7 30 15:14 -1.4 22 06:58 水戸(金町) 5.6 17.4 30 13:34 -2.9 06 06:58
1月の降水量(mm)の記録 観測地点 月降水量 日最大降水量 1時間最大降水量 降水量 日 降水量 日時 日立市役所 141.5 67.0 29 17.0 29 02:33 十王交流センター 145.0 89.5 29 24.5 29 03:05 北部消防署 147.0 82.5 29 23.0 29 02:34 本山(中学校跡) 227.0 108.0 29 24.5 29 03:31 西部支所 175.5 96.0 29 26.0 29 06:47 諏訪広場 119.5 56.5 29 17.0 29 02:32 南部支所 100.5 46.5 29 14.0 29 01:40 上記7地点の平均 150.9 - -
- - 日立会瀬 143.0 65.5 29 20.5 29 02:21 水戸(金町) 124.0 51.0 28 12.5 29 01:15
※日立会瀬と水戸(金町)は気象庁の観測地点。
◇1月の気温が、観測開始以来最も高くなる(2018年1月との比較)
最初に述べたように、今年の1月は上旬後半から日平均気温が平年を上回る日が続きました。気象庁の発表によると、この状況をもたらした要因は、日本付近で偏西風が北へ蛇行しやすく南から暖気が入ってきたことと、1月に入ってから北極域で低圧部が形成され、中緯度域に寒気が南下しにくくなったためとされています。
気温が平年を上回る日が続いたことから、今年の1月の平均気温6.6℃は、1972年と2000年1月の平均気温6.6℃と並んで、観測開始以来最も高くなりました。さらに、寒気の南下がほとんどなかったことから朝の冷え込みも強まらず、今年の1月の日最低気温0℃未満の冬日の日数は3日と、これまでで最も少なかった2007年1月の5日をに抜いて、観測開始以来最も少ない記録となりました。
なお、冬型の気圧配置が続かず低気圧が頻繁に通過したものの、低気圧に伴う南からの湿った空気の流れ込みは少なく、上旬から中旬にかけての降水量は17.5mmと平年(30.5mm)よりやや少なくなりました。しかし、27日から29日にかけて本州南岸を通過した低気圧によって、日立市役所で119.0mmの雨が降ったことから、月の降水量は141.5mm(平年比285%)と平年よりかなり多くなり、1月の降水量としてこれまで最も多かった2002年1月の139.5mmを抜いて、観測開始以来第1位の多い記録となりました。
●1月の気温、冬日日数、降水量及び日照時間の記録(日立市役所)
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※順位は数値の少ない方または多い方からで、1953年1月から2020年1月までの統計。
月平均気温が平年を下回った2018年1月と今年の1月の上層の流れを比較してみると、大気圧を表す高度と平年との差の分布に違いがありました。一昨年(2018年)の1月は下旬を中心に強い寒気が入り、日立市役所の月平均気温は3.9℃と平年より0.7℃低くなりました。また、月最低気温も1月25日に-5.6℃まで下がり、2014年2月5日に記録した-5.4℃以来の低い気温となりました。一方、 今年(2020年)の1月の平均気温は6.6℃と平年より2.0℃高くなり、月最低気温も-0.7℃までしか下がりませんでした。
2018年と2020年1月の月平均500hPa高度及び平年からの差を比較してみると、北極域と日本付近の偏差分布が大きく異なっていました。2018年1月は、北極域が正の偏差(橙色)で日本付近は負の偏差(水色)になっており、北極域から日本付近へ寒気が流れ出しやすくなっていました。一方、2020年の1月は北極域が負の偏差(水色)で日本付近は正の偏差(橙色)になっており、北極域から寒気が南下しにくくなりました。
●2020年と2018年1月の北半球月平均500hPa高度・平年差
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※気象庁の「気候系監視速報」から作成。等圧線の間隔は4hPa。
●日立市役所における過去5年間の1月の気象の推移
年 | 気温(℃) | 冬日の 日数 |
日照時間 (時間) |
降水量 (mm) |
平均湿度 (%) |
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平均 | 最低 | |||||
2016 | 5.1 | -2.7 | 10 | 178.2 | 64.5 | 59 |
2017 | 4.9 | -3.5 | 14 | 207.7 | 37.5 | 52 |
2018 | 3.9 | -5.6 | 17 | 198.7 | 41.0 | 52 |
2019 | 4.9 | -1.8 | 18 | 229.5 | 6.0 | 45 |
2020 | 6.6 | -0.7 | 3 | 161.8 | 141.5 | 62 |
平年値 | 4.6 |
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16.9 | 191.3 | 49.6 | 54.8 |
2018年1月と今年1月の比較の一例として、最低気温が下がった2018年1月25日と2020年1月22日の気象衛星可視画像と天気図を比べてみました。地上天気図をみると、2018年は西高東低の冬型の気圧配置となっています。500hPa面高層天気図をみると、北海道の東とオホーツク海に寒冷渦があり、その西側から南側を回り寒気が日本付近へ流れ込んでいます。このため、-36℃の等温線は関東地方北部まで南下しています。一方、2020年の場合は移動性高気圧が関東地方の東へ進み、前線が中国大陸から東シナ海へのびだし、春のような天気図となっています。500hPa面高層天気図でも、-36℃の等温線は北海道の北まで北上しており、寒気は日本の北から東海上へ流れています。
これに対応して、2018年の気象衛星可視画像では、日本海一面に寒気に伴う筋状雲が広がっており、大陸からの離岸距離も小さくなっています。また、東北から九州にかけての太平洋側や黄海にも筋状雲が広がっており、寒気が強いことを表しています。一方、2020年の可視画像では、寒気に伴う筋状雲は日本の東に広がるだけで、日本付近にはありません。かわりに、日本海から東シナ海に気圧の谷に伴う雲が広がっています。また、関東地方には高気圧の西側を回る湿った空気による収束雲が広がり、寒気が日本の北から日本の東へ流れていることを示しています。
●参考:2020年1月22日と2018年1月25日10時の気象衛星可視画像
●参考:2020年1月22日と2019年1月25日09時の地上天気図
●参考:2020年1月22日と2018年1月25日09時の500hPa面高層天気図
※実線は等高度線、破線は等偏差線で陰影域は負偏差を表す。
作成日 2020/02/14
名前 日立市天気相談所