OBSERVATION観測
◇上層に寒気が入り、天気のぐずつくときがある
上旬は、大陸から進んでくる高気圧におおわれて晴れる日が多くなりました。しかし、中旬に入ると上層の偏西風が北上し、日本付近を偏西風から分離した動きの遅い寒冷渦が進むことが多くなりました。さらに、日本の南で太平洋高気圧が西へ張り出し、高気圧の縁を回り湿った空気が流れ込んできて前線が停滞するようになりました。このため、曇りや雨の日が続くようになりました。この結果、月の降水量は198.0mm(平年比120%)と、平年より多くなりました。日照時間については、上旬は晴れる日が多く、日照時間は平年の1.5倍になりました。しかし、中旬以降は天気がぐずつくようになり、特に下旬は本州南岸の前線や低気圧の影響で雨が降り続き、日照時間は平年の半分になりました。このため、月の日照時間は121.9時間(平年比108%)と、ほぼ平年並みになりました。一方、太平洋高気圧からの暖気が入りやすかったことから、月平均気温は21.1℃と平年より1.9℃高くなりました。これは、6月の気温としては観測開始以来第4位の高い気温です。
6月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 21.1 19.2 月降水量(mm) 198.0 165.1 月日照時間(時間) 121.9 113.3
旬平均気温(℃) 順位 観測値 平年値 上旬 21.4 18.3 中旬 21.7 19.3 下旬 20.2 20.1
旬日照時間(時間) 順位 観測値 平年値 上旬 73.1 48.5 中旬 35.8 36.3 下旬 13.0 28.5
●6月の日立市役所における日平均気温の推移とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移
●6月の日立市役所における日最高気温と日照時間の推移
◇6月の日立市内の気温と降水量
6月の日立市内の気温の観測結果を比較すると、平均気温は最も南に位置する南部支所が一番高くなりました。次いで、市役所と十王交流センター、西部支所が21.1℃と同じ気温でした。一方、山間部にある本山は、最も気温が低くなりました。市内7地点の平均気温は20.7℃で、水戸の月平均気温22.0℃よりも1.3℃低くなりました。水戸と日立市役所の気温差は、5月とほぼ同じでした。なお、日立市内7か所の観測地点における平均気温は、5月に引き続いて全地点とも水戸より低くなりました。
一方、月の降水量の市内平均は214.4mmで、5月の平均降水量161.2mmより50mm近く多くなりました。観測地点の間の差は5月より小さくなり、最も降水量の多かった本山の266.5mmに対して、最も少なかった諏訪広場は186.0mmと1.4倍の差でした。また、市内7地点の平均降水量214.4mmに対して、水戸の月降水量は216.0mmとほぼ同じになりました。
●6月の日立市内と水戸の気温、降水量の観測結果
6月の気温(℃)の記録 観測地点 平均
気温最高気温 最低気温 気温 日時 気温 日時 日立市役所 21.1 32.7 10 13:32 15.7 17 04:51 十王交流センター 21.1 32.8 10 14:28 15.5 17 04:52 北部消防署 20.6 30.6 10 16:31 15.9 20 04:41 本山(中学校跡) 19.3 30.7 10 13:31 12.7 17 06:03 西部支所 21.1 33.0 15 13:03 13.8 17 05:11 諏訪広場 20.3 31.8 10 13:30 15.1 20 04:29 南部支所 21.2 32.5 10 13:20 16.2 20 04:41 上記7地点の平均 20.7 - -
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日立会瀬 21.1 32.6 10 14:07 15.9 17 04:09 水戸(金町) 22.0 32.6 10 12:19 16.8 20 04:07
6月の降水量(mm)の記録 観測地点 月降水量 日最大降水量 1時間最大降水量 降水量 日 降水量 日時 日立市役所 198.0 39.5 28 23.5 11 20:19 十王交流センター 219.0 46.5 11 26.5 11 20:28 北部消防署 216.0 48.5 13 20.0 11 20:27 本山(中学校跡) 266.5 55.5 11 22.5 11 20:04 西部支所 209.5 45.5 13 22.5 16 21:04 諏訪広場 186.0 44.5 28 19.5 28 09:35 南部支所 205.5 58.0 28 22.5 12 17:07 上記7地点の平均 214.4 - -
- - 日立会瀬 200.0 44.0 28 20.5 11 20:14 水戸(金町) 216.0 75.5 28 25.5 28 09:20
※日立会瀬と水戸(金町)は気象庁の観測地点。
◇大陸から暖気塊が進んできて気温が上がる(10日、真夏日初日)
9日から10日にかけて、上層の気圧の尾根が日本付近をゆっくりと東へ進みました。これに伴って、大陸から進んできた下層の暖気塊が、北日本から東日本へ流れ込んできました。つくばにおける高層観測の結果を見ると、高さ1500m付近(850hPa面)の気温は8日09時の11.8℃から10日09時には19.6℃まで上がり、下層へ暖気が入ってきたことを示してます。さらに、上層の気圧の尾根の東進に伴って、日本海から関東地方の南東へ進んだ高気圧は、9日から10日かけて動きが遅くなり、北日本から東日本をおおいました。このため、9日、10日と全国的に気温が高くなりました。
特に10日の関東地方では、南西の風がやや強く吹くいて晴れたため、内陸部を中心に最高気温が30℃を超えました。関東地方各地の最高気温は、栃木県佐野で35.0℃、群馬県桐生で34.9℃、茨城県大子で34.8℃など、86地点中57地点で最高気温が30℃以上となりました。茨城県内でも、上記大子の他、古河で最高気気温33.9℃、笠間で33.1℃を記録するなど、14観測点のうち北茨城と龍ヶ崎を除く13地点で最高気温が30℃を超えました。また、7地点で今年の最高気温となりました。
日立市役所における気温の推移を見ると、9日は10時44分に最高気温29.3℃を記録したものの、その後は東北東の風に変わったため、気温は夜にかけて下がっていきました。10日は11時から南南東の風が入り、気温は一旦下がりました。しかし、12時00分になると南西の風が強まって気温が上がり、13時32分には最高気温32.7℃を記録しました。これは、今年に入って初めての真夏日(最高気温30℃以上の日)で、真夏日初日の記録としては、昨年よりも39日、平年よりも19日早くなっています。最高気温を記録した後も南西の風が吹き続けたため、気温の下がり方は鈍く、24時になっても気温は24℃前後までしか下がりませんでした。
日立市内の気温を見ると、全地点で最高気温が30℃を超えるとともに、西部支所を除いて今年の最高気温となりました(6月30日現在)。なお、最も気温が高かったのは、西部支所の32.9℃でした。今回は、南西の風によるフェーン現象の影響が大きかったため、沿岸部の最高気温も十王交流センターで32.8℃、日立市役所で32.7℃、南部支所で32.5℃と、山間部と同じ程度まで気温が上がりました。
●今年の最高気温(℃)の記録 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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●真夏日初日の記録(日立市役所)
年 | 月日 | 最高気温 | 時刻 |
2014 | 07/10 | 30.4 | 13:18 |
2015 | 07/12 | 30.2 | 11:52 |
2016 | 06/18 | 30.4 | 11:15 |
2017 | 07/02 | 31.5 | 13:52 |
2018 | 06/27 | 32.7 | 14:54 |
2019 | 07/19 | 32.1 | 11:49 |
2020 | 06/10 | 32.7 | 13:32 |
平年 | 06/29 | - | - |
●6月9日から10日の気温の推移(10分値)
●6月9日から10日の風向と風速の推移(10分値:日立市役所)
●6月9日から10日の気温の推移(10分値:西部支所と南部支所)
日立市の沿岸部では、風向の違いにより9日と10日で気温の変化が異なった。山間部の南部支所と沿岸部の南部支所の気温の推移を比べてみると、9日は両地点の気温の変化が大きく異なっていた。
南部支所の気温の推移をみると、9日は日の出とともに気温が上がり始めて、11時35分には30.0℃の気温を観測した。しかし、11時30分を過ぎると風向が西北西から南東、そして北東へと変わっていったため気温は4℃近く下がり、その後も夜にかけて気温は徐々に下がっていった。10日になると、朝から夜にかけて南西の風がやや強く吹いたことから、気温は11時前に30℃を超えた。その後も気温は上がり続けて、13時20分には最高気温32.5℃を記録した。
一方、西部支所の気温の推移をみると、両日とも同じような気温の変化をした。また、9日の最高気温は13時11分に32.3℃、10日の最高気温は13時11分に32.9℃を記録し、同じ時間帯に同じ程度まで気温が上がった。
●参考:2020年6月10日13時と14時のアメダスによる気温と風の分布
●参考:2020年6月8日と10日09時の850hPa面高層天気図
8日09時の850hPa面高層天気図をみると、中国東北区には中心付近の気温が24℃以上の暖気塊があって、ゆっくりと東へ進んでいた。この暖気塊は、10日09時には東北地方から関東地方北部まで進んだ。このため、つくばにおける850hPa面の気温は、8日09時の11.8℃から10日09時には19.6℃まで上がった。
●参考:2020年6月8日09時と6月10日15時の地上天気図
作成日 2020/07/13
名前 日立市天気相談所