日立市天気相談所

OBSERVATION観測

◇雷を伴った強い雨

 低気圧と高気圧が交互に通り、天気は周期的に変化しました。上旬から中旬にかけては、本州付近で低気圧の発達が弱かったため、降水量は平年よりかなり少なくなりました。下旬も、移動性高気圧におおわれて晴れる日が多くありましたが、27日に低気圧が本州南岸を発達しながら北東へ進んだため、関東地方から東北地方の太平洋岸で、1時間に100mm前後の猛烈な雨が降りました。日立市でも27日の降水量が182.0mmに達したため、月降水量は208.0mmと平年の130%になりました。

10月の気象観測値
観測要素 観測値 平年値
月平均気温(℃) 17.7 16.4
月降水量(mm) 208.0 160.2
月日照時間(時間) 154.0 152.9
旬別降水量(mm)
降水量 旬平年値
上旬 2.0 53.7
中旬 22.0 59.7
下旬 184.0 45.8

 ●10月の日立市役所における日平均気温とつくばにおける500hPa気温の推移

1999年10月の日立市役所における日平均気温の推移 1999年10月のつくばにおける500hPa気温の推移

 10月27日夕方から夜にかけて、低気圧が発達しながら関東地方の南から三陸沖へ進みました。この低気圧は、中心の北側から東側の広い範囲に雨雲を伴っていましたが、これとは別に西から低気圧の南側を回って乾燥した空気が入り込み、27日の夜になって低気圧の中心付近で急速に雷雲が発達しました。この雷雲は、千葉県から茨城県の東部を海岸線沿いに北上したため、千葉県と茨城県の太平洋側で、1時間に80mmを超える非常に強い雨が降りました。千葉県佐原市では、19時から20時の1時間に153mmの雨が降り、気象庁の観測施設における1時間降水量の最大を記録しました。(1982年7月23日、長崎県長浦岳で観測した記録と並んで観測記録第1位)

 日立市役所でも、19時から22時にかけて146mmの雨が降りました。特に、20時14分から21時14分にかけての1時間には88.0mmの非常に強い雨が降りました。これは、日立市役所における1時間降水量としては、これまでで最も多い値です。【市役所における10月27日の10分間データ:テキストファイル9KB

 また、20時50分から21時00分までの10分間には、26.0mmの非常に強い雨が降りました。短い時間で、非常に強い雨が降ったため、市街地を流れる都市下水路があふれ、床上浸水69戸、床下浸水414戸の被害が発生しました。今回の大雨は、低気圧の中心に向かって、南から帯状に発達した雷雲が入り込んだため、雷雲が通過した海岸線に沿って局地的に降水量が多くなりました。茨城県北部の降水量の分布を見ると、日立市から北茨城市にかけての山地沿いに200mm近い降水量となりましたが、その西側の水戸市から大子町にかけては100mm以下の降水量でした。

27日の降水量(mm)

観測地点
総降水量 1時間最大
降水量
日時
日立市役所 182.0 88.0 27日21時14分
本山 224.0 112.5 27日21時18分
西部出張所 130.0 50.5 27日20時54分
南部支所 170.0 84.5 27日20時59分
※総降水量は、27日12時から24時までの合計。

 

市内4地点の降水量データ(htmlファイル)

降水量の記録(1953年〜1999年の統計)

1時間降水量の記録(mm)

順位 降水量 年月日 時 刻 備    考
1 88.0 1999/10/27 21時14分 発達した低気圧による雷雨
2 73.0 1980/09/03 19時10分 雷雨
3 66.7 1962/08/24 16時06分 雷雨(寒冷前線)
4 60.7 1962/07/14 01時45分 雷雨(寒冷前線)
5 52.2 1961/06/29 10時00分 梅雨前線

10分間降水量の記録(mm)

順位 降水量 年月日 時 刻 備    考
1 30.3 1968/06/29 15時09分 雷雨(寒冷前線)
2 26.0 1999/10/27 21時00分 発達した低気圧による雷雨
3 21.0 1980/09/03 18時30分 雷雨
4 20.0 1993/09/10 18時22分 雷雨(上層寒冷渦)
5 20.0 1978/08/16 17時30分 雷雨(熱雷)

 参考:10月27日の降水量分布と降水量レーダー図


 ●参考:10月27日の地上天気図と高層(500hPa面)天気図及び気象衛星赤外画像

1999年10月27日09時の天気図

1999年10月27日21時の天気図

※高層天気図において、実線は等高度線を、点線は等温線を表しています。また、観測地点における上段の数値は、その地点の500hPaの高さにおける気温を、下段の数値は、同じ高さにおける気温と露点温度の差を表しています。


 気象衛星水蒸気画像は、上層から中層の大気の流れを視覚的に表すとともに、明暗の変化は大気の質的な違いを表します。26日21時の水蒸気画像を見ると黄海に上層の気圧の谷があり、その前面の四国から中国地方にかけて雨雲が広がっています。そして、九州の西の海上には地上低気圧が発生しています。

 27日になると上層の気圧の谷は朝鮮半島まで進み、前面の雲域は北へ円形状に盛り上がり、地上低気圧が発達していることを示しています。さらに、15時の水蒸気画像を見ると暗黒色の乾燥域が地上低気圧の後面から南側を回って低気圧の中心に入り込み、その先端部分が白く輝いて雨雲が発達していることを表しています。21時には、この乾燥域が入り込んでいる先端の西側、低気圧の中心付近に当たる茨城県の東海上に白く輝く雲は進んでいます。この雷雲の一部がかかって、千葉県から茨城県にかけての太平洋側で強い雨が降りました。

 28日の03時になると乾燥域が低気圧の中心部にまで入り込み、コンマ状の雲形がはっきりとして低気圧の勢力が最盛期に最盛期に達していることを示しています。その後、09時の画像では、乾燥域が低気圧の北側まで回り込み、乾燥域の東側境界では雲が白く輝いて発達しているものの、中心付近では白さが弱まり、低気圧の衰弱が始まっています。この後、低気圧は徐々に弱まりながら東北東へ進み、29日には千島近海へ達しました。

 ●参考:気象衛星水蒸気画像

急速に発達した低気圧

気象衛星水蒸気画像

1999年10月26日21時
   〜10月28日09時

↓は上層の気圧の谷
は地上低気圧の位置


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更新日 1999/11/08
訂補日 2007/05/31
訂補日 2009/04/27
訂補日 2013/07/31
名前 日立市天気相談所