OBSERVATION観測
◇台風と秋晴れ
上旬後半から中旬にかけては、低気圧や台風、前線の影響で曇りや雨の日が多くなりました。特に11日には台風第15号が関東地方を縦断し、荒れた天気となりました。台風が関東地方に直接上陸したのは、1989年8月6日に銚子市付近に上陸して関東地方を北上した台風第13号以来12年ぶりのことです。下旬に入って、9月20日に台風第17号が房総半島の東を北上した後は、大陸から進んできた移動性高気圧におおわれて晴れる日が多くなりました。
上旬の前半はオホーツク海高気圧から北東の風とともに冷たい空気が入り、気温が低くなりました。また、下旬は大陸からの高気圧に伴って上層に寒気が入るようになり、気温が平年を下回るようになりました。反対に、中旬は台風や低気圧に向かって南から暖かい空気が入り。気温が高くなりました。この結果、月平均気温は21.3℃(平年比-0.3℃)とほぼ平年並みになりました。日照時間の推移をみると、上旬後半を中心に台風や前線の影響で日照時間が少なくなったものの、例年とは逆に下旬に晴れる日が続いたことから、月の日照時間は144.6時間(平年比111%)と平年をわずかに上回りました。一方、台風による雨は関東地方西部を中心に降ったことと、低気圧や前線の活動はそれほど活発でなかったことから、月の降水量は121.0mm(平年比61%)と平年より少なくなりました。
9月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 21.3 21.6 月降水量(mm) 121.0 197.8 月日照時間(時間) 144.6 129.8
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 22.6 23.2 中旬 23.5 21.7 下旬 17.7 19.8
旬日照時間(時間) 旬 観測値 平年値 上旬 33.7 48.4 中旬 39.5 41.2 下旬 71.4 40.2
●9月の日立市役所における日平均気温と日照時間の推移
●9月の日立市役所における日最低気温とつくばにおける850hPa気温の推移
21日に台風第17号が関東地方の南から日本の東へ進んだ後、一時的に上層から下層にかけて強い寒気が入りました。このため、22日の朝は内陸部を中心に冷え込みが強まり北海道では氷点下の気温となった所がありました。日立市役所でも08時48分に日最低気温11.4℃を記録し、今月の最低気温となりました。
中旬までは曇りや雨の日が多かったことと下旬に入って急に気温が低くなったことから、最高気温が30℃を超えた日(真夏日)は8日の1日だけで、最近5年間では最も少なくなりました。また、この後に真夏日となる日が現れなければ、最近5年間では最も早い真夏日の終日となります。
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※真夏日とは日最高気温が30℃以上の日。
◇台風第15号が関東地方を縦断(11日)
4日に南鳥島の南海上で発生した台風第15号は、徐々に発達しながら日本の南海上を北西へ進みました。10日に東海道沖まで北上してきた後、向きを北東へ変え、11日09時半ころに神奈川県鎌倉市付近に上陸しました。その後、台風はしだいに弱まりながら、東京都から茨城県北部を経て11日の夜には宮城県沖へ進みました。なお、台風の上陸時の中心気圧は975hPa、 最大風速は30m/sで中心から半径60kmの暴風域を伴っていました。
台風は規模が小さく上陸後は勢力が衰えたため、日立市ではそれほど強い風は吹きませんでした。ただ、台風が茨城県南部から中部を通過して東海上へ抜けたため、9時頃から16時頃にかけて南東の風が、16時過ぎから19時頃にかけては西南西の風がやや強く吹きました。日立市役所では、17時28分に西の風18.6m/sの最大瞬間風速を記録しています。
しかし、台風の動きが遅かったことと台風の北側を回る東寄りの湿った空気の影響で、関東地方西部の山沿いでは降水量が多くなりました。8日から12日の総降水量は、栃木県奥日光で895mm、神奈川県箱根で766mmになりました。一方、日立市では8日から9日はほとんど雨が降らず(市役所の降水量は8日、9日とも0.5mm)、10日から11日の降水量も41〜122mmと山間部を除いて多くなりませんでした。ただ、台風を取り巻く帯状の雲がかかった11日9時と台風の中心が通過した11日17時前後に、1時間に20mm前後の強い雨が一時的に降りました。
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総降水量 |
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日時 | ||
日立市役所 | 49.0 | 16.5 | 11日17時28分 |
北部消防署 | 57.5 | 17.5 | 11日17時30分 |
本山 | 122.0 | 26.0 | 11日17時07分 |
西部出張所 | 100.0 | 17.0 | 11日09時03分 |
南部支所 | 41.0 | 12.5 | 11日17時00分 |
水戸(金町) | 80.0 | 19.5 | 11日16時12分 |
※総降水量は、10日03時〜11日21時までの合計。
●9月11日の風と気圧の記録
地点 | 最大風速(m/s) | 最大瞬間風速(m/s) | 海面気圧(hPa) | |||||
風速 | 同風向 | 同時刻 | 風速 | 同風向 | 同時刻 | 最低気圧 | 同時刻 | |
日立市役所 | 9.6 | 北西 | 16:56 | 18.6 | 西 | 17:28 | 983.6 | 16:23 |
南部支所 | 11.1 | 東南東 | 15:38 | 22.0 | 南南東 | 15:23 | - | - |
水戸(金町) | 12.2 | 西北西 | 15:50 | 23.7 | 西北西 | 15:57 | 978.2 | 15:21 |
●9月10日〜11日の降水量の推移(本山と北部消防署)
●9月11日03時〜18時の降水レーダー図
●9月11日12時、16時、17時のアメダスによる風の分布
●9月11日09時の地上天気図と台風第15号の経路図
◇台風第11号と台風15号の比較
先月の22日にも、台風第11号がほぼ同じコースで茨城県内を通過しました。1年間に2回も台風が茨城県を通過したのは、非常に珍しいことです。この二つの台風は、茨城県内ではほぼ同じコースを進み、いずれも日立市付近を通過しました。日立市では、台風による雨や風は両日とも特に強くはなりませんでした。また、日立市付近を通過したときの二つの台風の大きさや強さは、ほぼ同じでした。しかし、台風が通過したときの海面気圧の変化を見ると、二つの台風の形の違いが現れていました。
気象衛星「ひまわり」の赤外画像で見るように、台風第11号は目の直径が大きく、「なべ底型」と言われる形をしており、台風の中心から離れたところに強風域がある型です。一方、台風第15号は「ろうと型」と言われる形で、目が小さくはっきりとしていて、中心付近で最も風が強くなる型です。台風第11号通過時の海面気圧の変化を見ると、台風が近づいてくる前からほぼ一定の割合で、ゆるやかに気圧が下がり、通過後も比較的ゆるやかに気圧が上がっていきました。これに対して台風第15号の場合は、台風の中心が近づくにつれて急速に気圧が下がり、通過後の気圧の上がり方も急でした。
このような台風の構造の違いに対応して、雨や風が強くなった時間も下の表のような違いがありました。台風第11号では中心の通過する7から5時間前に雨や風が強かったのに対して、台風第15号の場合は、中心の通過した直後が、雨や風が強い時間帯でした。【市役所における8月22日の10分間データ(台風第11号)と9月11日の10分間データ(台風第15号):いずれもテキストファイルで、容量は11KB(下の海面気圧変化グラフの元データ)】。
●台風による降水量と最大風速の比較(日立市役所)
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降水量(mm) | 最大風速(m/s) | ||||
総降水量 |
1時間最大 降水量 |
同時刻 | 最大風速 | 同風向 | 同時刻 | |
台風第11号 | 57.5 | 15.0 | 08月22日13時29分 | 8.1 | 南東 | 08月22日11時29分 |
台風第15号 | 49.0 | 16.5 | 09月11日17時28分 | 9.6 | 北西 | 09月11日16時56分 |
●台風経路図と気圧の変化の比較
●日立市役所における風速の比較
●参考;地上天気図と気象衛星画像の比較
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更新日:2001/10/19
訂補日:2001/11/14
訂補日:2015/03/10
名前 日立市天気相談所